【個人用】リベルテ
CV:麻倉もも
幼き人狼・リベルテ
《進化前》
リベルテは駄目な子です。鼻も駄目、耳も駄目なんです。
でも、芸は……芸だけは出来るです!
火の輪潜りも、軽業も、教えられたですから!
ちょっとでも笑ってくれたら、うれしーです!
《進化後》
憐れな子。哀しい子。
私の前に現れた――私の罪の象徴。
……私には、貴方と関わる権利がありません。
――人狼の女王・ルーナ
衝動の人狼・リベルテ
《進化前》
リベルテ、とっても良い子なんです。
昔は何にもできねーって、叩かれて、怒られたけど……
今は引き裂いて、噛みちぎって、吠えるんでごぜーます!
そうしたら――もう嫌なこと、されなくなったんです!
《進化後》
悪い子だったリベルテは、ずーっと我慢してたです。
でも、今は良い子でごぜーますから!
嫌なことがあったら、息を変えて、目を光らせて――
――グォ、ォ、グオォォォォッッッ!
神バハにおけるリベルテ
【紹介文】
好きなもの:ルーナ
嫌いなもの:えっちな人と鞭
サーカスで見世物として過ごしてきたラウルフの少女。
サーカスで抑圧されて育ってきたこと、同族と一緒でなかったことなどから、ラウルフとしての力を十分に発揮できず、それが少々コンプレックスになっている。
ラウルフガール・リベルテ (SSレア)
リベルテ、眼も鼻も耳も、駄目なんです。だから、役に立てないかもですけど…でも、芸は出来ます!得意です!だからどうか…ルーナさんを助けて下さいですっ!
ラウルフガール・リベルテ+ (SSレア)
サーカスは、とてもつらいとこでした。…リベルテ、獣みたいに扱われてたです。そんなリベルテを助けてくれたのは、ルーナさんでした。だから、恩返ししたいんです!
ラウルフガール・リベルテ++ (SSレア)
ラウルフ族なのに…自分の力を、上手く使えないんです。…怖くて。リベルテ、がるるってなっちゃうと…なんでも噛むし、なんでも引っ掻いちゃうですから…。
[咆恐]ラウルフガール・リベルテ (レジェンド)
本能に触れる…自分の心に聞いてみる…。分かりました、やってみるです。…傷付けたら、ごめんなさい。…リベルテ、吼えます!
ピースフレンド・リベルテ (レジェンド)
リベルテ、おにーさんやおねーさんみたいな人以外としゃべるの、初めてです…。緊張しちゃって、うまくしゃべれなくて…本当は仲良くしたいのに…。
[友愛狼]ピースフレンド・リベルテ (Sレジェンド)
ヴァンピィちゃんはリベルテのこと、友達だって言ってくれました!リベルテ、ダメなところいっぱいですけど、もっともっと仲良くなりたいです!
[攻友狼]ピースフレンド・リベルテ (Sレジェンド)
友達って何をしたらいいんでしょう?リベルテ、ずっとサーカスにいたからよくわからないですけど…友達が困ってたら、力になりたいって思うです!
[防友狼]ピースフレンド・リベルテ (Sレジェンド)
ルーナさんのおかげで、リベルテは変われたです。外に出れて、たくさんの友達ができました!だから、今度はリベルテが大切な友達を守ってあげたいです!
サマーラウルフガール・リベルテ (レジェンド)
リベルテ、こんな大きな水溜りを見るのもあんなにたくさんの人を見るのも初めてです。…リベルテがサーカスで見世物にされてた時のお客さん、いないですよね?
サマーラウルフガール・リベルテ+ (レジェンド)
きしさま、ごめんなさい。リベルテが怖がるから、人のいない場所に連れてきてくれたですよね?せっかくの休暇なのに…わっぷ!?水を掛けたのは誰ですか!?
サマーラウルフガール・リベルテ++ (レジェンド)
えへへ、きしさま!この子、とっても人懐っこいですよ!でもこの子の尻尾に荷札がついてるです。…そうか、お前もリベルテと同じように売られたですね。
[夏優狼]サマーラウルフガール・リベルテ (Sレジェンド)
海獣さん、荷札はリベルテが取ったです。もう自由ですよ。リベルテもそうやって助けてもらった事があるです!だから行って下さい。本能のまま生きるために!
神バハ 関連ストーリー
[無才の姫君と幽冥の迷宮]
ストーリー
きしさま、一緒に来てくれてありがとうです!
この迷宮の奥にあるという《黄金の果実》
…ルーナさんにも食べさせてあげるためにも、
リベルテがんばるですよ!
ほうここがケルベロス姉様の仰っていた迷宮でありますか!
くんくん…なるほど、幽霊共の匂いに満ちていますな。
さくっと一掃してやるとしましょう!
オルトロス、出陣であります!
エルフ王族式行進曲、参ります!
すっすめ~すっすめ~え~る~ふ~!…大丈夫、わたくしならきっとできますわ…
この迷宮で、力を目覚めさせるのです!
国のため、民のためにも!
次回、神撃のバハムート!
無才の姫君と幽冥の迷宮。
めざせ、《黄金の果実》!
OP
騎士はリベルテに頼まれ、彼女と共に、《迷宮》があるという森に来ていた。
リベルテは、迷宮の最奥にあるという秘宝《黄金の果実》がどうしても欲しいそうだ…
「ここが森の迷宮…!この一番奥に、《黄金の果実》があるですね…リベルテがんばるです!」
「ウワサによると、こわーい幽霊がいっぱいいる迷宮らしいですけど…きしさまと一緒なら怖くないです!」
????
「人影!?…いえ、このような場所に誰もいるはすがありませんわ…ということは…幽霊ですわ!多分!」
「とうとうわたくしにも見えるようになりましたのね…!幽霊さん、安らかにお眠りなさい!」
「行きます!エルフ王族式短刀術!てりゃああああー!」
「えっ!?ぎゃー!な、なんですかぁ!?」
????
「まあ!なんと素早い動き!もしや軽業師の幽霊ですの!?わたくしのナイフを避けるとは…」
「それに…よくよく見ますと、なんと元気そうな少女の幽霊でしょうか…頬もこんなに薔薇色で美しく…」
「そちらの騎士の幽霊さんも、こう、世界を何回も救っておられそうな程風格があるお方ですのに…」
「お二人とも既に他界しているとは…何たる悲劇!このメリオーネ、涙があふれてきそうですわっ…!」
「ゆーれい…?もしかしてそれ、リベルテときしさまのことですか?リベルテたちは生きてるですよ!」
メリオーネ
「生きてる?生きて…ええっ!?な、なんですって!?そんな…!…騎士様、少々失礼いたしますわ!」
騎士は、突然現れた謎のエルフ…メリオーネに、手をぎゅっと握られた。
メリオーネ
「まあ、なんと温かくお優しい手…たくましさの中にも、繊細さが…本当に素敵な方なのですのね…ぽっ」
「…って、ハッ!!そうではなく!!このような実態があるということは幽霊さんでは、ない!?そんな…!」
「…いえ!たとえ騎士様は違ってもこちらのラウルフお嬢さんは…!」
「わひゃひゃひゃ!く、くすぐったいですよ~!」
メリオーネ
「あらまあ、お耳がふわっふわで…うふふ、可愛いお嬢さんですわね!気持ちがほっこりといたしますわ」
「……ってそうではなく!!まさかとは思いますが…二人ともまだ生きていらっしゃいますの!?」
「まさかもなにも、生きてるですよ!こんなぴんぴんしてる幽霊がいたら教えてほしーくらいです!」
メリオーネ
「な、なんと…!ではわたくし、お二人ともに、大変な無礼を…!申し訳ございませんっ!!」
「…しかし、幽霊ではなかったとは…やっと…やっと見えるようになった、と思いましたのに…」
「えと…メリオーネさん、ですっけ?よくわかんないけど元気出すです。きっといいことあるですよ」
メリオーネ
「まあ…ありがとうございます。そうですわね…!王族たるもの、へこたれてはいられませんわ!」
「ラフルフのお嬢さん、騎士様、お騒がせして申し訳ございません。わたくし、失礼いたしますわね!」
「あ、ちょっと!…迷宮に入っていっちゃたです。あのお姉さん…大丈夫ですかね…?」
「えーっと、とりあえず…きしさま、リベルテたちも中に入るですよ!最奥目指して、がんばるです!」
メリオーネの入って行った迷宮に騎士とリベルテたちも足を踏み入れた…
「うぅ…や、やっぱり、幽霊がいっぱいいるってだけあって不気味な迷宮ですね…」
「…あれっ?あそこにいるのって…メリオーネさん?」
メリオーネ
「お父様、お母さま、国民の皆様…待っていて下さい!わたくし、必ずやり遂げてみせますわ…!」
幽霊
「コォオオオオオ…!」
「げっ…メリオーネさんのすぐそばに幽霊が…でもメリオーネさん、全然気づいてないみたいですよ!?」
「あのままじゃ危ないです…!きしさま、メリオーネさんを助けてあげようです!!」
>いいえ
メリオーネ
「王族たるもの、常に堂々と!めげず、へこたれず、退かず!そうあるべきですわ、うんうん!」
幽霊
「ゴォオオオオオオー…!!」
「いやいや、やっぱり危ないですよ!放っておいちゃいけないタイプの女の人です!助けてあげようです!」
>いいえ
「そんな、きしさま…。もしかしてご褒美にリベルテの芸が見たいからそんなこと言ってるですか!?」
「わかったです!リベルテ、全力で剣呑みの芸を…えっ、いいですか!そうですか…?」
騎士はメリオーネのもとに駆け寄り、彼女を襲おうとしていた幽霊を斬り伏せた。
幽霊
「オオオオオ…オオオ…」
メリオーネ
「え…先程の騎士様!?い、一体どうなさったんですの?そのように剣を振り回して…」
「どうしたって…それはこっちのセリフです!メリオーネさん、すぐ傍の幽霊が見えてなかったんですか?」
メリオーネ
「ぎくぅ!?…ゆ、幽霊が?いましたの?先程?わたくしの、すぐ傍に?」
「それは…も…もももも、もろ、もちもちろ、も・ち・ろ・ん!見えておりましたともっ!」
「でも、そう!ホラ、お綺麗な女性の幽霊でしたから、ナイフで刺すのは若干忍びなく…」
「…さっきの幽霊、フード被ってて顔なんか見えなかったですよ?」
メリオーネ
「ぎくぎくぎくぅ!?え、ええっと……わたくし、これにて失礼いたしますわっ!!」
「あ、いっちゃった…ていうか逃げちゃったです。しかも、またリベルテたちと同じ迷宮の奥へ…」
「…なんだか、あのおねーさんとはまた会いそうな気がするですよ…」
第1話 嘘つきエルフ姫
1
騎士はリベルテと共に迷宮内を進んでいた…。
「ぶるるっ…リベルテのダメな鼻でもわかるです。ここ、死のニオイってやつがするですよ…色んな人たちが、ここで亡くなったっぽいです。」
「みんな、迷宮のいちばん奥にあるっていう《黄金の果実》を求めてやって来て…それで、辿り着く前に死んじゃったですかね?うぅ、こわいです…」
「でも…リベルテ、頑張るです!だって、きしさまが一緒ですから…こわいけど、こわくないです!」
「《黄金の果実》は、この世のものとは思えないほど美味しいらしいですから…リベルテ、その実を使ってルーナさんにスープを作ってあげるんです。とびっきり美味しくて、とびっきり辛いスープを!」
「ルーナさんには、野生の力の使い方、たくさん教えてもらってるですから…リベルテも恩返ししたいんです。ありがとうって気持ち、いっぱい伝えたいです!」
「あ、もちろん、スープはきしさまも一緒に食べてほしいですよ、きしさまと、リベルテと、ルーナさんとで…えへへ。きっと、すっごくすっごく楽しいご飯になるです!」
「よーし、元気が出てきたですよ!どんどん奥に…って、あれ?…あっちにいるのって、もしかして…」
メリオーネ
「ふう、さっきは危ないところでしたわね!あのラウルフのお嬢さんと、騎士様に、わたくしの秘密が露見してしまうかと…あのお二人とこれ以上接触するのは、避けた方が良さそうですわ」
「…でも…ラウルフのお嬢さんはとってもカワイかったですし…それに、あのお優しい手の騎士様ともう関わらないというのは…なんだかもったいないですわね…ぽっ」
幽霊
「ゴゴゴゴゴゴ…!」
「や、やっぱりメリオーネさんでしたね…。予想通り、また会っちゃったです。しかも、幸せそーな顔してますけど、また大ピンチじゃないですか!きしさま、早く助けてあげようです…!」
2
騎士とリベルテは、メリオーネに襲い掛かろうとしていた幽霊を追い払ってあげた。
メリオーネ
「まあ、騎士様たち!もしや…わたくしを追って来て下さったのですか?それほどまでにわたくしに惹かれて…?うふふ、嬉しいですわ…ぽっ」
「いやいや、そーじゃなくて…リベルテたちは、またメリオーネさんが幽霊に襲われそうになってたから、助けてあげたですよ!」
「…あの。さっきからちょっと思ってたですけど…ひょっとしてメリオーネさん、幽霊が見えないんですか?」
メリオーネ
「ぎぎぎぎくぅ!?…お、おほ、おほほほほ!そそそ、そんなバカなことは全然まったくこれっぽちもありませんでしてよ!?」
「わたくしこう見えても、エルフの大国《フォレスト・ウトヴィア》の王女でしてよ?そしてエルフの中でも、わたくしたちは特に霊的なモノ…精霊やスピリットといったものとの関りが深い一族」
「精霊たちの力を借り、大国と呼ばれるまで国を発展させてきましたのに…その一族の次期頭首たるわたくしが!まさか!霊的なモノを全く感知できないなど!」
「そんなっ、そ、そそ、そんなわけがありませんわ!ええ、先程もバッチリ見えていましたとも!その…アレ…えっと…か、かわいい子猫の幽霊でしたわよね!ですから斬るのをためらってしまい…」
「いや、すげー怖いオオカミのゴーストだったですよ?…メリオーネさん、ウソが下手過ぎるです…」
メリオーネ
「はうぅ!?くぅ…も、最早誤魔化せませんか…こうなったら…!」
「すぅー…はぁ…。…騎士様…そして、リベルテさん、と仰ったかしら。どうか、驚かないでほしいのですけれども…実は…実は、わたくしっ…!」
「霊的なモノが…何一つ、見えないのですっ!幽霊も…そしてもちろん、精霊も!」
「…あ、ハイ。…いや、驚かないでほしいもなにも、最初からなんとなくわかってたですけど…」
メリオーネ
「えぇぇ!?わたくし一世一代の大告白でしてよ!?国内でも知っているのはお父様と、お母様、あとは最も近しい世話役の者だけしかいない、超超超重大な秘密ですのよ!?」
「確かに、驚かないでほしいとは申しましたが!でも、せめてもう少し!多少なりとも!こう、なにか!ちょっとくらいは!あってほしかったですわよっ!?」
「驚くなって言ったり驚けって言ったり忙しい人ですね…」
「けどメリオーネさん、幽霊が見えないのに、どうしてこの迷宮にやって来ちゃったですか?ここ、ウワサに聞いてた通り、幽霊だらけですし…危険ですよ!」
メリオーネ
「それは…やむにやまれぬ事情があるのです。わたくし、なんとしてもこの迷宮の最奥に…《黄金の果実》の所まで、辿り着きたいのです!!いえ…王族たるもの、辿り着かなければっ!!」
「あっ!…また行っちゃったです…でも、放っておいたらまたピンチになっちゃうですよね。…きしさま、メリオーネさんを追いかけるですよ!」
3
【追跡中】
ばればれだったですけど、メリオーネさんにとって、幽霊が見えないことは秘密にしたいくらい重要なことだったんですね…。
もうちょっとちゃんとお話をすれば逃げられずに済んだかもです…。
リベルテはラウルフですから、幽霊とかそーゆうのふつーに見えちゃうですよ。
気配に敏感で、鼻の利く獣人にはそういうのって結構多くて…。リベルテも、生まれた時から幽霊とか精霊は見えてました。
…だから、メリオーネさんの気持ち、よくわからなくて…メリオーネさんを追いかけちゃいましたけど、もしかしたら、そういうリベルテのこと、メリオーネさんは嫌いって思うかもしれないです…。
きらわれるのは…かなしいです…わぷっ!?わふ、わ、わ、きしさま、なんでリベルテの頭撫でるですか?フフ、くすぐったいです…!え?きっとだいじょうぶ?
…うん。きしさまがそういうなら、きっとだいじょうぶ…。
よーし、早くメリオーネさんに追いつくです!
第2話 果実とボス幽霊
1
危なっかしいメリオーネを追いかけ、迷宮を進んできた騎士たちは、とうとう彼女に追いつくことができた。
メリオーネ
「あらまあ、リベルテさんに騎士様!そんなに息を切らしてどうしたんですの?まさか…それほどまでにわたくしを想って?まあ…実はわたくしも貴方たちのことが頭から離れず…ぽっ」
「いえ、想ってたっていうか…フツーに心配してたですよ。メリオーネさん、幽霊が見えないのにこんな幽霊だらけの迷宮を進むなんて…じさつこーいってやつです!」
メリオーネ
「リベルテさん…ご心配いただき、感謝いたしますわ。とても優しい子ですのね。…けれどわたくし、立ち止まるわけには参りませんの!なんの成果も得ず、おめおめとは帰れません!」
「騎士様、リベルテさん、この迷宮の最奥に、《黄金の果実》と呼ばれる秘宝があるのはご存じでして?」
「はい、知ってるですよ!ミスタルシア1美味しい果物なんですよね?リベルテは、きしさまと一緒にそれを取りに来たんです!《黄金の果実》で作ったスープを、ルーナさんに食べさせてあげるんです!」
メリオーネ
「まあ、ますます優しいですわね!とても素敵な事だと思いますわ。ということは、リベルテさんたちも《黄金の果実》をお求めに…でしたら、わたくしと同じですわね」
「メリオーネさんも《黄金の果実》を…?えっと、じゃあ、リベルテが見つけたやつ、半分こするですか?」
メリオーネ
「いえ!わたくしが求めているのは、《黄金の果実》そのものではなく、その周囲にいるはずの幽霊ですの!」
「『ミスタルシア1美味な果実』『一口食べれば幸福になれる』『匂いを嗅ぐだけで巨万の富が手に入る』などの噂を聞きつけ、多くのハンターたちがこの迷宮を訪れ…命を落としましたわ」
「そして《黄金の果実》に近づけば近づくほど、死者たちの未練はより強くなり…より強力な力を持つ幽霊が彷徨っているに違いありません!」
「ですからわたくしは、先に進まねばならないのです!だって、その強い幽霊なら、わたくしにも見えるかもしれませんから!いえ、見えるに違いありませんわ!こう…ヌシ的な存在なら!」
「えっ…そ、そうですかねぇ…?」
メリオーネ
「そうに違いありません!だって、弱い幽霊よりも強い幽霊のほうが、こう…感知できそうでしょう!?存在に圧がありそうでしょう!?そういうことですわ!」
「はあ、そういうものですか…リベルテには、ちょっとよくわかんないですけど」
メリオーネ
「きっと奥の幽霊さんならば、わたくしにも見えます…!王族たるもの、希望を捨ててはなりません。わたくしは、進まねばならないのです…!」
幽霊
「キィィィ…!」
「わ!また幽霊が出てきたです…!」
メリオーネ
「なんですって!?こちらにいるのですか1?もしや。騎士様たちを襲おうと!?それは、このわたくしが許しませんわよ!王族たるもの、民を守るべき!…えいっ!やぁっ!とぉぉう!」
幽霊
「キキキ…?」
「わあ…見当違いのとこを斬り付けすぎて、幽霊のほうがちょっと戸惑ってるですよ…。本当に見えてないんですね。とりあえず…きしさま、追い払ってあげようです!」
2
騎士は、メリオーネの様子に戸惑っているようだった幽霊を追い払い、メリオーネを助けてあげた。
メリオーネ
「助けるつもりが助けられてしまうとは…騎士様、リベルテさん、ありがとうございます。お二人には感謝してもしきれませんわね…国に戻りましたら、必ず恩返しをいたしますわ!」
「わたくしの国…《フォレスト・ウトヴィア》は、とても良いところですのよ。豊かな土地ですし、住民たちの心も穏やかで…わたくしの、なによりの自慢ですの!」
「たとえば…騎士様、リベルテさん、お魚はお好きでして?我が国の近くには、美しく澄んだ大きな湖がございますの。そこで獲れるお魚はまさに絶品!頬が八つは落ちましてよ!」
「ええっ!?リベルテのほっぺたは二つしかないですから、そんなに落ちたら困るですけど…でも、美味しそうです…!えへへ、お魚…じゅるり…」
メリオーネ
「ふふっ、楽しみいしていてくださいまし!それから…お二人を招き、宴を開くのも良いですわね!わたくしの国民たちは、皆心優しく愉快な者ばかり。楽しい時を過ごせるとお約束とお約束しますわ!」
「パーティですか…!楽しそうです!えへへ…みんな、リベルテが芸したら、拍手してくれるですかね…?」
メリオーネ
「ええ、きっと!…《フォレスト・ウトヴィア》は、本当に良い国ですわ。そして、その豊かさは、精霊たちのおかげで築かれたもの」
「なればこそ…いずれ王位を継ぐわたくしが、霊的存在を見ることができず、声も聞こえないなどというのは、お話になりませんわ。このままでは国を守れません!王族失格です…!」
「メリオーネさん…とっても、責任感が強いんですね」
メリオーネ
「責任…そうですわね。王族たるもの、果たさねばならない責務がある…それは間違いありませんわ。…けれど、それ以上に…わたくしは、わたくしの国を、心から愛しているのです」
「わたくしは、あの国が愛おしい。森と水に囲まれた国土が、笑顔と活気に溢れる民たちが、国を守り、導いてくれる精霊たちが…《フォレスト・ウトヴィア》そのものが、大好きなのです」
「その国で、姫として生を受けたのならば!わたくし、精一杯王族としての義務を果たしたいのです!王族たるものこうあるべき、という全てを!まんべんなく!しっかりとっ!!」
「ですから…リベルテさん、騎士様。ご心配して下さったのは、とても嬉しいですわ。感謝いたします。けれどわたくし…迷宮の奥へと進むこの足を、止めるわけには参りませんの!」
「なるほど…事情はわかったです。それに、メリオーネさんの気持ちも。…きしさま、リベルテ、もうひとつだけお願いしてもいいですか?」
「目的地は、同じ迷宮の奥ですから…ここからは、メリオーネさんも一緒がいいです!お願いしますです!」
リベルテは必至のお願いに、騎士は頷いてあげた。
メリオーネ
「えぇっ!?そんな、リベルテさん、騎士様…!よ、よろしいんですの!?でもわたくしは、霊が見えませんし…ご迷惑になってしまうのでは…?」
「確かにちょっぴり大変かもですけど…リベルテは、メリオーネさんのこと、応援したいって思ったですよ。…大好きな故郷を守りたいって気持ち、すごく素敵だと思うです」
「メリオーネさんが大好きな国は…そのまま、幸せに続いてほしいです。…リベルテの故郷は、もうなくなっちゃたですから。そういう悲しいこと、繰り返しちゃダメだって、リベルテは思うです」
メリオーネ
「リベルテさん…そうだったんですの…」
「…ありがとうございます、リベルテさん、騎士様。感謝してもしきれませんわ。ではわたくし、付いていく身として、手下らしく振舞いますわね!見ていてください…エルフ王族式手下術!」
「ヘイ、リベルテのアネゴに騎士サマ!いきやしょうでヤンス!奥へと続く道は、こちらでヤンス!案内するでヤンスよ!」
「えっ…い、いや、そーゆーのはいいですよ…。…きしさま、メリオーネさんってヘンなところで器用な人ですね…?…ていうか…もしかしなくても、ヘンな人ですね…?」
3
【エルフ王族式手下術】
メリオーネ「リベルテのアネゴ!お荷物お持ちいたしますでヤンス!あ!騎士サマ、お疲れでしたら肩を揉むでヤンスよ!」
リベルテ「い、いいですよ!メリオーネさん!リベルテ、自分のことは自分でできるです!」
メリオーネ「遠慮なさらないで下さいでヤンス!わたくしの手下っぷりはまさに王族級でヤンスよ!」
リベルテ「王族級の手下っぷりとか、よくわからないです…。うう…リベルテの知ってる言葉がすくないからですか?きしさまはわかりますか?メリオーネさんの言ってることがなんか全然わかんないのはリベルテだけですか?リベルテは王族っていうのをルーナさんでしか知らないですから…。同じ王族でも、ルーナさんとはこう…だいぶ違うですよ…!?」
メリオーネ「リベルテのアネゴ!なんでも言って下さいでヤンス!こうみえてもわたくし、千と一のエルフ王族術を身に着けてるでヤンスから!お腹空いてないでヤンスか?このエルフ王族式手下術を用いれば、ふところから瞬時にあたたかいヤキソバパンを出す事もたやすいですわ!…あっ、でヤンスよ!」
「じゃ、じゃあ、メリオーネさん」
メリオーネ
「なんでヤンスか?アネゴ!」
「その手下術ってやつ…やめてほしいです…」
メリオーネ
「わかりましたでヤンス!!…って、えっ!?お気に召しませんでしたの!?くっ、わたくし…まだまだ未熟っ…!もっと手下術をを磨かなければ…!!」
「そ、そういうことじゃなくて~…」
第3話 安眠妨害行進曲
1
騎士はリベルテ・メリオーネと共に迷宮の奥を目指していた。その道中にて…。
「ふ~…入口から、けっこう歩いてきたと思うですけど…まだまだ先は長いっぽいですね。《黄金の果実》まで、あとどれくらいですかね…?」
メリオーネ
「リベルテさん、元気がなくなってしまいましたの?ふぅむ…でしたらわたくしが、リベルテさんを励まして差し上げますわ!そうですわね…行進曲でも歌えば、元気に歩けるに違いありません!」
「へっ…行進曲?いえ、リベルテ、そーゆーのは別に…というかメリオーネさん、さっきの演技といい、なんでちょこちょこ変わった技術を身につけてるですか?」
メリオーネ
「あら、変わった技術などではございませんわよ?どれも皆、王族たるもの身につけていて当然のものばかりですわ!」
「それにわたくしには、霊的存在を感知できない、という重大な欠陥がございますから。それを補って余りある、むしろどんどん余りまくる技術を身につけずし如何しましょう!」
「…きしさま、リベルテは、王族ってなんなのかよくわかんなくなってきたです。メリオーネさんが一生懸命な人だ、っていうことだけは、なんとなくわかるですけど…」
メリオーネ
「ともあれ!わたくしの持ちうる限りの技術で、リベルテさんの足を軽くして差し上げますわ!少々お待ちくださいませ…ンッンー!」
「それでもお聞きください…エルフ王族行進曲、第一番!…すっすめ~すっすめ~え~る~ふ~!み~みっもな~がいっがみ~ちも~なが~いっ♪」
「あっ!待ってくださいメリオーネさん、足元ちゃんと見てっ…!」
???
「ぷぎゃっ!?」
メリオーネ
「んぎゃぁ!?…い、いたたた…なんですの?何か、柔らかいものに躓いて…」
???
「うぅ…思い切り腹を踏まれたであります…。まったく、なんでありますか?人が気持ちよく任務前のお昼寝を堪能していたというのに…!」
メリオーネ
「え、獣人さん!?…いえ、このように危ない迷宮に獣人さんがいるはずがありません。ということは…幽霊ですわ!違いありませんっ!」
「あれ?このパターン、なんだか見覚えあるような気がするです…」
メリオーネ
「わたくし、やっと力が目覚めましたのね!獣人の幽霊さん、お礼の代わりに…安らかな眠りへ導いてあげましてよっ!エルフ王族式短刀術、てぇい!!」
???
「むっ!?自分に聖なる魔法のかかったナイフを向けるなど…なかなか度胸のある長耳ではないか。だが…我が魔炎,斯様な短刀では切り裂けんぞ!」
「あぁぁ、ややこしいことになっちゃったです…!きしさま、二人を止めるですよ!」
2
騎士は、取っ組み合いになってしまったメリオーネとオルトロスの間に割って入り、二人の争いを止めた…。
「はぁ、ありがとうございますきしさま…メリオーネさんっ、落ち着いてください!よく見てほしいです。わんちゃんのおねーさんは、幽霊じゃないですよ!」
メリオーネ
「なんと!?幽霊さんでは…ない…!?そんなまさか…!」
「まさかもなにも、さっき躓いてたじゃないですか!実態があるってことは、つまり幽霊じゃないですよ。…あとこのやりとり、さっきもやったですよ…」
メリオーネ
「そう…でしたか…。わたくしったら、霊を見たいあまりにまた大変失礼を…。わんちゃんの獣人さん、申し訳ございませんでした…!」
???
「いえいえ!自分は、騎士殿の同行者とは知らず、申し訳ございません。それに…幽霊ではありませんが、自分は冥界の者ですので。まあ大枠でとらえれば同じようなものでありますよ!」
メリオーネ
「まあ、冥界ですか!?これはこれは、境界を越え、遠路はるばるお疲れ様でございますわ…!わたくし、エルフの大国《フォレスト・ウトヴィア》の姫、メリオーネと申します」
「や、これはこれは!自分は冥界の番犬見習い、ケルベロス姉様の妹分、オルトロスと申します!メリオーネ殿、リベルテ殿、よろしくお願いいたします。騎士殿も、久方ぶりにお会いできて嬉しいであります!」
「自分は姉様より言いつかった任務がございまして、ここに訪れたのでありますが…御三方、いったいなぜこのような迷宮に?」
騎士はオルトロスに、これまでのいきさつやリベルテとメリオーネの目的などについて話をした。
「な…なななな…なんという…!かたや恩人に贈り物をするため…かたや己が愛する国を守るため、このように危険な迷宮へやって来たとは…!くぅ~、泣かせるでありますなぁ…!」
「決めたであります!騎士殿、リベルテ殿、メリオーネ殿!御三方に、自分も同行させてほしいであります!迷宮踏破、不肖このオルトロスがお手伝いするでありますよ!」
「オルトロスさんも一緒に来てくれるですか!…でも、いいんですか?オルトロスさん、さっき任務があるって…」
「大丈夫であります!自分が姉様より与えられた任務は、幽霊の巣食う迷宮へ行ってその原因を調べ、取り除くことでありますからな」
「そして自分が姉様より伺ったところによりますと、この迷宮に幽霊共が巣食う原因は、《黄金の果実》にあります。つまり目的地は皆同じ!これも何かのご縁、共に協力いたしましょう!」
メリオーネ
「まあ…!願ってもいないことですわ、オルトロスさん!これから、どうぞよろしくお願いいたしますね」
「ええ、よろしくであります!…お互い、しっかり協力するといたしましょう。ここの幽霊共…少々厄介な性質を抱えているそうでありますからな」
「やっかい…?オルトロスさん、それってどういうことです?」
「フム…恐らく、もう少し進めば明らかになるでありましょう。今はとにかく進軍、であります!参りましょう、騎士殿!」
3
【リベルテの『ルーナさん』】
リベルテ「リベルテもきしさまも、幽霊の姿は見えるですけどなにを言っているかまではわからないですから…オルトロスさんがいてくれてとっても助かるです!きしさまもそう言ってたですよ!」
オルトロス「ありがとうございます、騎士殿、リベルテ殿。しかし、これは冥界の番犬であれば至極当然のことでありますんで…呼吸していることを褒められているようで、なんとも面映ゆい気持ちになるでありますな」
リベルテ「そうですか…オルトロスさん。リベルテもいつかオルトロスさんみたいに幽霊の声を聴けるようになれるですか?」
オルトロス「うぅむ、そうでありますなあ…。リベルテ殿は神狼族。霊的な力は普通の人間などよりもずっと上でしょうから、修練次第でできるようになるかもしれませんな!それに、上位の獣人などは神や政令に近い存在になるというであります」
リベルテ「上位の獣人?」
オルトロス「ええ。非常い長く生きた者たち、神や魔人の遣い、それらの眷属…それから、力の強い王族などがそれにあたりますな!」
リベルテ「王族…!じゃあじゃあ、ルーナさんもですか?…あっ、ルーナさんは狼人族の女王様です!リベルテにいろいろ教えてくれて、あったかくて、ふわふわで、いいにおいがするんですよ!」
オルトロス「おお!リベルテ殿がそう仰られるならば、その方はさぞ立派な方なのでしょうな!」
リベルテ「はいです!なるほど、さすがルーナさんです…ルーナさんならきっと、なんでもできちゃうですね!幽霊相手にすべらない話だって、きっと…!」
オルトロス「…う、うぅむ…。見ず知らずのルーナ殿、なにやらすまないであります…自分のせいでリベルテ殿の中のルーナ殿の像がとても高いことに…」
第4話 苦の連鎖を断て
1
オルトロスも加わり、より一層賑やかになった一行。時折行進曲を歌いだそうとするメリオーネを止めつつ、順調に迷宮内を進んでいた…。
…かに見えたのだが。
「…やはり。これは…嵌められている、でありますな。皆様!足を止めてほしいであります!」
「ん…?オルトロスさん、どうしたですか?急に立ち止まって…疲れちゃったです?」
メリオーネ
「まあ、そうですの…でしたら、わたくしにお任せくださいまし!わたくしのエルフ王族式マッサージ術で、オルトロスの足のコリなどをほぐしにほぐして…」
「いえいえ、そういうのではなく…!皆様、前方にありますあの木を見てほしいであります。あの、三つ又に分かれた枝…見覚えがないでありますか?」
「あれ!?あの木って…!お、おかしいですよ、きしさま!リベルテたち、ついさっきもあの木の前を通ったです!なのに、どうして…!?」
メリオーネ
「奥へ奥へと進んでいたようでしたのに…わたくしたち、いつの間にか道を戻っていたんですの!?まったく気づきませんでしたわ…!」
「やはり…この迷宮の幽霊共、一筋縄ではいかないようでありますな」
「そういえオルトロスさん、さっきもそんな感じのこと言ってたですね。どういうことなんです…?リベルテたちがぐるぐる同じ道を歩かされてるのって、ここの幽霊たちの仕業なんですか?」
「勘が鋭いですな、リベルテ殿!仰る通り…個々の迷宮に住まう幽霊たちは、人を惑わし、道に迷わせる呪いを用いるであります」
「未練を抱え地に留まった霊というのは、己と同じ苦しみお生者にも味わわせようとするもの。この地の幽霊共は皆、《黄金の果実》を目指して迷い果て、力尽きた者ばかりでありますから…」
「リベルテたちにもその苦しみをあじわえーって、リベルテたちを迷わせてるですか!?むむむ…これじゃ先に進めないです!いったいどうしたらいいですか…!?」
メリオーネ
「ふむむ…未練…苦しみ…生者を巻き込む…。…はっ!そうですわ、思いつきました!!騎士様、皆様、わたくし一度その幽霊さんとお話したいんですわ!なんとかなりませんか…!?」
「話、でありますか?ふむ。別段こちらから探さずとも…」
幽霊
「ォオオオオ…!!」
「…やはり、向こうから出てきたでありますな。とはいえ、話をするには、まず落ち着かせねばならないようであります。騎士殿!やってしまいましょう!」
2
騎士はオルトロスと共に、暴れる幽霊を大人しくさせた。
「さあ、大人しくしてもらおうか。痴愚に時間を割いてやる暇はない…灰燼と化したく無くば、その魯鈍な口、速やかに開け」
「オルトロスさん、なんだか雰囲気が違いませんか…?」
「や!これは、お見苦しいところを。しかしメリオーネ殿、これで幽霊と話ができるようになりましたぞ!」
メリオーネ
「ありがとうございます、オルトロスさん!では、失礼いたしまして…コホン。幽霊さん?手荒い真似をしてしまい、すみません。わたくし、エルフの姫、メリオーネと申す者ですわ」
幽霊
「……?」
「あの…メリオーネさん。今、幽霊のお腹に話しかけちゃってるですよ。もうちょっと上に話した方ほうがいいと思います」
メリオーネ
「まあ!リベルテさん、ありがとうございます!…このくらい、かしら?すみません幽霊さん、わたくし、貴方のことが見えていないものでして」
「けれど、わたくしは、貴方の未練を晴らすお手伝いをしたいと考えておりますの!わたくしでよければ、なんでも力になりますわ。どうぞ、望みを仰って!」
「ええっ!?あの、メリオーネさん?幽霊の未練を晴らすって、なんで急にそんなこと言いだしたですか!?」
「いや…!メリオーネ殿、なかなかの慧眼かもしれないでありますよ!」
「幽霊共が自分たちのことを迷わせるのは、苦痛の記憶や未練があるゆえ。つまりそれを解消してやれば、連中の呪いは止まるやもしれません!」
メリオーネ
「ええ。幸福な者が疎ましいのならば、同様の幸福を与えて差し上げればよろしいのですわ!さ、幽霊さん、なんでも仰ってくださいまし!」
幽霊
「ゴ…ォォォ…ォォォ…!」
「では、僭越ながら、自分が通訳を。ふむふむ…ふむ…え、なんですと?…生前は、幾度も舞台を沸かせたバレエダンサーだった?」
「ダイエットに効くと聞き、《黄金の果実》を求めて迷宮へ潜り…そして命を落としたと…ふむ。つまり、召される前にもう一度だけ、皆とバレエを踊りたい…それが貴様の願いなのだな」
メリオーネ
「バレエですか?でしたら任せてくださいまし!わたくしが、エルフ王族式バレエダンス術でお相手いたしますわ!」
「バレエダンス術って…メリオーネさん、ほんとにいろいろ器用ですね…」
メリオーネ
「よろしければ、騎士様もご一緒にいかがです?…まあ、なんと華麗なステップ!わたくし、惚れ惚れしてしまいそうですわ…ぽっ」
こうして騎士とメリオーネは、幽霊と共にバレエを踊った。すると霊はいたく満足したようで、騎士たちを迷わせるのをやめ、先に進ませてくれるのだった。
3
【冥界の番犬見習いとエルフの国の半熟王女】
メリオーネ「この迷宮の幽霊たちも色々な理由でここへきて、命を無くしたのですわね…」
オルトロス「そうでありますなあ。見ず知らずの他人を引きずり落としたくなるほどに、濁った未練を魂に抱えているのでありましょう。そういう臭いがぷんぷんするであります」
メリオーネ「大丈夫ですわよ、幽霊さまがた…わたくしが彼らのの望みを叶えて差し上げますから。…それがわたくしの王族としての使命ですわ!」
オルトロス「フム。メリオーネ殿、ずいぶん身を粉になさいますが…彼らはメリオーネ殿の国の民草なのでありますか?」
メリオーネ「いいえ、どことも知れぬ国の者ばかりだと思いますわ」
オルトロス「…なぜそのようにしてまで?」
メリオーネ「当然ですわ、オルトロスさん!…わたくしは精霊と共にあるエルフの国、《フォレスト・ウトヴィア》の王女ですのよ?つまるところ…精霊の声を聴くのも、彷徨える霊の魂の声を聴くのもだいたいは同じこと!無視するわけには参りませんわっ!」
オルトロス「んん!?途中から大いに論理が飛躍したでありますな!?いえまあ確かに、前進するためには彼奴等の未練を晴らすことが大切ではありますが…!」
メリオーネ「それもありますがそれ以上にっ!困っている方々を見過ごすなど、王族のやることではありません。ささ、どんどん霊たちの話を聞いていきましょう!そしてばんばん解決して差し上げましょう!」
オルトロス「いやはや…はは。メリオーネ殿には敵わないでありますなあ」
第5話 リベルテ一発芸
1
騎士たちの迷宮探索は続く…。
「それにしても、先程のバレエダンスは素晴らしかったでありますなあ!あまり芸術を介さない自分ですら、胸にジーンとくる美しさだったであります!」
「メリオーネさんもですけど、きしさまがバレエを踊れちゃうなんて驚きだったです…!もしかして、どこかで踊ったこととかあるですか?」
騎士は、バレエではないがそれに近いモノを踊って、サタンと対決したことがある…と話してあげた。
「なんと、サタン様でありますか!?…騎士様は相変わらずすごい経験をお持ちでありますなぁ…。あと自分、氷獄の王の以外にひょうきんな面を知ってしまい、驚きが隠せないであります」
メリオーネ
「そのような経験をお持ちの方とご一緒できたなんて、光栄ですわ!ご協力頂きありがとうございます、騎士様。初めての共同作業…でしたわね…。ぽっ」
「さて、そんな皆様の努力の甲斐あって、ここまで順調に進んでこられた…で、ありますが…」
「オルトロスさん、もしかして…リベルテたち、また惑わされてるですか?」
「どうやら、そのようでありますなぁ…。まったく厄介な迷宮であります。また幽霊の未練を解消してやらねば、先に進むのは困難かと」
「自分の炎で幽霊共を焼き尽くして事が済むのなら、いっそ楽なのですが。そうしたら別の連中が呪いをかけに来るだけでありますからなぁ…」
「こうやって、この迷宮全部の幽霊を相手にする羽目になるよりは、味方につけて、道を開けてもらったほうがいいってことですよね
メリオーネ
「ではさっそく、幽霊さんを探す事にいたしましょう!…幽霊さん、お話しましょーう!出てきてくださいましー!!」
幽霊
「ゴーッ!!ォォオオーッ!!」
メリオーネ
「出~てきてくださいましーっ!幽霊さーん!えーっと、どうしたら出て来やすいかしら…あっ、そうですわ!わたくし、実は貴方がたの仲間でしてよー!…エルフ王族式物真似術!…コォオオオー!」
「…意外と似てますけど、もう後ろに出てきてることには気づけないですね…」
「霊的存在がまったく感知できない、でありますか…メリオーネ殿の抱える問題は、なかなか根深いようでありますなぁ」
「…ともあれ、騎士殿!まずはあの幽霊を大人しくさせるでありますよ!」
2
騎士たちは幽霊を大人しくさせ、道を開けてもらうため、彼の未練について聞き出すことにした。
「ふむふむ…ふむ。どうやらこの幽霊は、子どもの頃に両親とサーカスを見に来た時の、楽しい思い出が忘れられないようでありますな」
「栄誉と称賛を求め、《黄金の果実》狩りにこの迷宮までやって来たはよいものの、命を落とし…地位や名誉以外にも大切なものがあったと、死んでから気づいたそうであります」
「ふむ…真に大切なことは、最初に見失ってしまう所にこそ隠れている。畢竟、そういうものでありますなぁ」
メリオーネ
「グスッ…泣かせますわ…!大丈夫ですわよ、幽霊さん。心配なさらずとも、わたくしたちが貴方の大切な思い出を取り戻して差し上げます!」
「ってことは…サーカスをやるですか?わかったです!じゃあリベルテ、少しだけ役に立てると思うです。リベルテ、芸なら教え込まれてるですから!たとえば…ほら!」
そう言うと、リベルテは地面に落ちていた丸い石を拾って、華麗なジャグリングをしてみせた!
「おおおおお!?七つ、八つ…十!これほどの数の石を自在に…!!どどど、どうやったらそんなんことができるでありますか!?リベルテ殿、すごいであります…!」
メリオーネ
「わたくしも、エルフ王族式かくし芸術を披露しようかと考えておりましたが…リベルテさんの芸は数段、いえ、圧倒的に上ですわ!手が勝手に惜しみない拍手を贈ってしまいます…!パチパチパチパチ!」
「いやメリオーネさん、手じゃなくて口も動いてるですけど…あとかくし芸って、エルフはそんなことまでできないとなんですか…?」
リベルテの芸は確かに凄い。騎士もメリオーネに同意し、惜しみない拍手を贈る…するとリベルテは、照れくさそうに頬を真っ赤に染めた。
「きしさままで…そ、そんなに褒められるとヘンな気持ちですね。サーカスにいた頃は、芸をやっても褒められることって全然なくて…だいたい、おっきな声で叱られたばかりでしたから」
「…リベルテ殿は、なかなか壮絶な幼少期を過ごされてきたのですな。その素晴らしい芸の裏にも…悲しい想い出が多々あるのでありましょう」
「しかし成り立ちは悲しくとも、リベルテ殿の芸は今、自分たちの助けとなってくれました!自分たちはただ、今のリベルテ殿を称賛したいであります!」
「オルトロスさん…そう言ってもらえると…リベルテも、芸ができてよかったなぁって思えます!」
「ふむ、となると…思いついたであります!リベルテ殿、自分にも芸を教えて頂けないでありますか!?そうですなぁ…例えば、火の輪くぐりなど!なに、自分なら多少焦げても平気でありますので!」
「えっ…芸を教える、ですか!?リベルテが、オルトロスさんに…!?」
「お願いであります、リベルテ殿!!いえ、今だけはこう呼ばせていただきましょう…リベルテ師匠!!」
「し、ししょー!?はわわ…そ、そんな、やめてくださいです!なんだかすごく恥ずかしくなってきたです…これじゃ、芸を失敗しちゃうですよ~!」
と、賑やかなことになりつつも、騎士たちは無事サーカス芸を成功させ、幽霊を満足させて、次に進むことができたのだった…。
だが、オルトロスとリベルテが楽しそうにしている、その一方で…。
メリオーネ
「リベルテさん…貴方は、そのように辛いことがあっても…今は前を向いて…」
「…えっ?あ、騎士様!いえ、なんでもございませんわ。さあ、先に進むといたしましょう!エルフ王族式行進術で、元気よく!いち、にー!いち、にー!…ですわっ!」」
3
【エルフ王族式軍隊行進曲】
メリオーネ「えっるふーえっるふー、なーがっきみーみっはかーざりっにあらず!エルフイヤーは冥界耳っ!エルフアイは収束魔法っ!」
オルトロス「なんと…!エルフ族には斯様な能力が!?自分、無知でありました!」
メリオーネ「いいえ、オルトロスさん。これは太古から伝わるエルフ王族式軍隊行進曲の唄…。伝説のエルフ族のみが身に着けていたと言われる能力ですわ!我ら現存のエルフ族は、このようなエルフになるため、日々精進しているのです!」
オルトロス「なんとっ!?」
リベルテ「ぜったい違う気がしますですが…。でも、さっきからちょっと元気ないメリオーネさんが、空元気だとしても…それで前進してるならいいですよね、きしさま?」
メリオーネ「えっるふーえっるふー、もーりっをまーもりっしけーだかっきせんし!エルフウイングは天界を飛びっ!エルフカッターは悪即斬っ!!」
オルトロス「エルフ族…侮りがたし!!」
リベルテ「いい…ですよね…?」
第6話 王族の通過儀礼
1
多くの幽霊の心を癒し、騎士たちは徐々に迷宮の最奥…《黄金の果実》の元へ近づいて来ていた。
「くんくん、くんくん…確かに、近づいてる…と思うです!そんなニオイがするです!」
「…えへへ。きしさま、リベルテがちゃんと鼻を利かせてて、びっくりしたですか?匂いのかぎ分けかた、さっきオルトロスさんに教えてもらったですよ!ちょっとだけ、コツがつかめてきたです!」
「リベルテ殿は筋がいいでありますよ!冥界第二位の鼻を持つ自分が言うのでありますから、間違いありません。この調子で磨いていけば、いずれは立派に獣の力を扱えるようになるであります!」
「ほんとですか!?じゃあ…じゃあオルトロスさんっ、リベルテにもっといろいろ教えてほしいですよ!それで、きっときしさまやルーナさんに、ちゃんと恩返しできるリベルテになりたいです…!」
「もちろん構いませんとも!自分も騎士様には大恩がありますし、もっとケルベロス姉様のお役に立てれば…といつも考えているであります。ですからリベルテ殿の気持ち、よくわかるでありますよ!」
「せっかくですからこの迷宮で、自分と一緒に秘密の特訓をいたしましょう。これを」機に大きく成長し、騎士殿やルーナ殿をびっくりさせるでありますよ!」
「きしさまや、ルーナさんを…!えへへ…リベルテ、頑張るです!きしさまやルーナさんがびっくりして、わーって褒めたくなる、そんなリベルテに、なるですよ…!」
メリオーネ
「…リベルテさん、貴方は…わたくしが考えていた以上に、とても立派な方なのですね。わたくしには、貴方のことが…とても、眩しく映りますわ」
「へっ?メリオーネさん、急にどう…」
幽霊
「キィィィィ…!!」
「はっ!リベルテ殿、後ろであります!」
メリオーネ
「え!?ど、どこに…!!」
リベルテの背後に現れた幽霊が、今まさにリベルテ目がけて攻撃の手を振り下ろそうとする。リベルテのすぐ隣にいるのはメリオーネだが、彼女には霊が見えていない!
――騎士は急ぎリベルテの傍まで駆け寄り、幽霊目がけて剣を抜き放った!
2
危うくリベルテを傷つけられてしまうところだったが、間に合ったようだ。騎士は無事、幽霊を討ち払うことに成功した。
「危ないところでありました…リベルテ殿、お怪我はないでありますか!?」
「きしさまが守ってくれたですから、平気です!きしさま、本当にありがとうございます」
メリオーネ
「くっ…!リベルテさん、申し訳ございませんっ!わたくしがちゃんと気づいていれば…いえ、そもそもちゃんと見えていれば、貴方の身を危険に晒すこともなかったというのに…!」
「え…い、いえいえ!メリオーネさんのせいじゃないですよ!突然後ろにわーってきて、リベルテも全然気づいてなかったですし…」
メリオーネ
「いえ。国民どころか、目の前の友人一人守れぬとは…王族失格も甚だしいですわ…!ぐぬぬ…!!」
「うぅむ…メリオーネ殿の抱える事情は、やはり深刻でありますな」
「しかし、皆が精霊の輩として暮らしている《フォレスト・ウトヴィア》の中で、何故メリオーネ殿だけが霊的存在を感知できないのでありましょうか?」
メリオーネ
「それは、恐らく…というか間違いなく、通過儀礼を失敗してしまったからですわ」
「《フォレスト・ウトヴィア》で生まれたエルフたちは、皆ある程度成熟すると、聖域と呼ばれる森へ向かうことになっています。聖域にて祈りを捧げて初めて、精霊たちの輩と認められるのですわ」
「ただし、お祈りに行けるのは一生に一度だけ。朝これより聖域に参りますと神に宣言し、その日の日没までに聖域へ辿り着かなければ…通過儀礼に失敗した、とみなされてしまうのです」
「えっと、じゃあ…メリオーネさんだけ、日没までに聖域へお祈りに行けなかったですか?でも、どうして…?」
メリオーネ
「それが、聖域に向かう途中、火がついたように泣いている迷子の子どもがおりまして」
「エルフ王族式あやし術を用いても、泣きやむまでに長い時間がかかり…それからもエルフ王族式拡声術や、エルフ王族式似顔絵術をフル活用してその子の母親探しに明け暮れ…気づけば、日没に」
「なるほど、それは…なんとmp、メリオーネ殿らしい失敗のしかたでありますなぁ…」
メリオーネ
「無論、当時のわたくしの行動に関し、後悔などはしておりませんわ!幼子一人も笑顔にできずして、国民の幸せなど守れるはずもありません。わたくしは姫として当然の義務を果たしたまで!」
「しかし…結果として、王族とは名ばかりのできそこないに成り果ててしまったことには、やはりやりきれない思いを抱えてしまうのです」
「このままでは、『王』族など名乗れません…せいぜい『土』族止まりですわっ!!」
(リベルテ殿、無知な自分に教えて頂きたいのですが…メリオーネ殿はいったい何を仰っているので…?)
(う、うーん…あとちょっと、っていうかあと一本足りない!みたいな感じですかね…?ともあれメリオーネさんは、すごく悩んでるみたいです…)
メリオーネ
「…すみません、そんなことよりも先に進むのでしたわね。《黄金の果実》の元へ、向かわねばなりません!…きっと…そこまで辿り着けば、わたくしにも、きっと…!!」
3
【メリオーネの抱える事情】
王女でありながら、まさか通過儀礼を失敗してしまうとは…!
これでは精霊たちと絆を取り結ぶなど到底無理な話…。
そんな出来損ないが、国を背負うことなどできましょうか…?
これまで王冠を引き継いできたのは王族直系の子孫ばかりでしたし、お父様とお母様の間に生まれた子はわたくし一人…。
となるとわたくしが王位を継ぐほかないと考えていましたが、話が変わってきてしまったのでは…?
わたくしのような失格者でなく…国内からでも国外からでも、精霊と立派に絆を育める方を、新たな王位継承者としてお迎えするのが国にとって良いのでは…!?
…いえ…いえ!よく考えるのよメリオーネ!
それはわたくしに与えられたこの責任を、この尊き名を、ただただ放り捨てることに他なりませんわ…!
ここで折れてしまっては…わたくしだけでなく、わたくしまで血筋を繋いでくださったご先祖様方の魂の尊厳を損ないます!
この世に生を受け産声を上げたそのときから、わたくしの背負うべきものは決まっていた…今更尻尾を巻いて逃げることは許されません!
なにより…逃げたくありませんわ!!
わたくしは、この国を愛していますもの…!!
そうと決まれば…今以上に、王族として様々な技術を身につけなければ!
そもそも迷子の子をご案内した時とて、もっと優秀なエルフ王族式案内術を身に着けていれば良かったのですわ!
未熟!ただただ未熟!すなわち必要なのは修練!!
とにかく、王族として必要そうなことはなんでも身に着けて参りますわよ!
よぉ~し、頑張りますわ~…!!」
第7話 王族式何とか術
1
ここまで色々ありつつm、迷宮探索を進められてきた騎士たち。幽霊たちの懐柔も、騎士やリベルテ、オルトロス、そしてメリオーネの頑張りで順調に進み、もはや道を阻むものはなにもない…。
…かに思えていたのだが。
幽霊
「コォォオォ…キィィィ…」
「ふむ。ふむふむ。…ふむ」
メリオーネ
「あの、リベルテさん、騎士様。わたくし色々と見えていないものですから。よくはわからないのですが…オルトロスさんと幽霊さん、今回はなんだか長くお話していらっしゃるのですね?」
「そうですね…お話してる幽霊のほうは、なんだかちゃんとしてるっていうか…貴族さまみたいな恰好をしてるですから…未練を聞き出すとかより前に、話が弾んでる…とかですかね?」
メリオーネ
「…どうなのでしょう?なんだかその割には、オルトロスさんのこめかみが、こう。ピクピクしていらっしゃるような…?」
「――散れ」
「へっ?…あ、あの、オルトロスさん?どうしちゃったですか?」
メリオーネ
「あっちぃ!?いけませんわっ、エルフ王族式消化術!…ふー、ふー…!!」
「あの、オルトロスさん!?炎が!貴方の炎がチロッと、いえむしろボワッと漏れてしまいましてよ!?いったいどうなさったんですの!?」
「愚に愚を重ねた凡愚めが…貴様に身の程という言葉を教えてやろう。我が魔炎で、その腐り果てた頭に文字通り焼き付けてやる…!」
「わわわ!?なんだかオルトロスさんが怒り狂っちゃってるですよ!?」
メリオーネ
「し、しかし、ここで幽霊さんと事を構えるのはよろしくないのですわよね!?」
「そうです!リベルテたちせっかくここまで来たのに、あの幽霊のごきげんを損ねたら、また迷子の呪いをかけられちゃうですよ!きしさま、オルトロスさんを止めてくださ~い!!」
2
騎士は興奮状態に陥ってしまったオルトロスをなだめてあげた。
「はっ…!お、お手間をおかけして申し訳ございません騎士殿!ただ、そこの輩があまりに無礼なことばかり言うものでして…!!」
「落ち着いてほしいですよ、オルトロスさん。リベルテたち、道を開けてもらわないとなんですから…。それで、今度はなにが未練な幽霊さんだったですか?」
「…わかりました、お話いたします。実はそちらの幽霊…召される前にもう一度、舌のとろけるようなフルコース料理が食べたいとのことでして」
「フルコース、ですか?うぅーん…迷宮の中で叶えるのは、ちょっとむずかしいお願いですね」
「それだけではないのであります!フルコース料理も食べたいが天蓋つきベッドでゆっくり眠りたい、それから煌びやかな装飾品で身を飾りたいなどと!もう!どこまでわがままなのかと!」
「――やはりここは我が魔炎で消し炭にっ!!」
「わー!だから、落ち着いてくださいですー!…気持ちはだいぶよくわかるですけど!!」
メリオーネ
「なるほど…姿こそは見えませんが、事情はお察しいたしましたわ。ここはわたくしにお任せくださいませ、皆様!!」
「なんですとっ!?メリオーネ殿、まさか…!!」
メリオーネ
「ふふふ…まずはフルコース料理、と仰いましたわね!それでは…エルフ王族式料理術による『迷宮フルコース』、ご賞味あれ!!」
「こ、これは…!前菜は《ソノヘンゴケのソテー~ミスタルシア魔海風~》、続いて《ミノマダラムシの肝吸い》…!迷宮内の少ない材料で、まさかこれほどのコース料理が!?」
メリオーネ
「まだまだですわ!続いて…エルフ王族式大工術、およびベッドメイキング術による、『天蓋付ベッド』!!」
「おおおお~!!落ち葉の中でも選び抜かれたもの…即ち最高峰落ち葉と言っても過言ではないものを敷き詰められ作られたベッド!そして視界を優しく覆うクモの巣の天蓋!か、完璧であります…!」
メリオーネ
「そして…これが最後ですわ!エルフ王族式アクセサリー生成術…照覧あれっ!!」
「くぅぅっ…!な、なんという眩しさ…なんという美しさ!道端の小石も、ありえない速度で磨くことによってまさかこれほどの輝きを得るとは…!不肖オルトロス…感激であります…!」
「……きしさま……王族って…王族って、なんなんですか…!?リベルテは、わからなくなってしまったですよ…!!」
メリオーネ
「ふう…!幽霊さん、ご満足頂けましたか。…しかし貴方、貴族とはいえあまりわがままを言うものではなくてよ!人の上に立つとは、威張り散らかすことを言うのではありませんわ」
「綺麗なアクセサリーは他に脅かされぬ威厳のため!大きなベッドは国中奔走した身体を癒すため!豪華な食事は倒れず働き続けるため…!全ては民のために在るその身にこそ、与えられるのですから」
幽霊
「オォォォォ…」
「…とても満足そうな顔で逝ったでありますな。ひょっとすると彼の者が真に求めていたのは、メリオーネ殿が仰ったような言葉なのやもしれませぬ」
「…あの、メリオーネさん。リベルテ、王族のことはよくわかんないですけど…でも、メリオーネさんなら、今のままでも…!」
メリオーネ
「えっ?なにか仰いましたか、リベルテさん?…もしかして、疲れてしまいまして?たくさん進んできましたものね!」
「でも《黄金の果実》はきっともう目の前ですわ。どんどん参りましょう!エルフ王族式行進曲…第二番!すっすめ~すっすめ~え~る~ふ~、ひ~とみ~はま~っすぐや~~のよ~うに~!」
「いえ、そうじゃなくて…!」
「リベルテ殿…お気持ちはわかりますが、今は進むでありますよ。良き言葉は、良き時にこそ、メリオーネ殿に贈ってさしあげましょう。…さあ騎士殿、我々もメリオーネ殿の後に続くであります!」
3
【《フォレスト・ウトヴィア》王族付き魔導師長と近衛兵長の会話】
フォレスト・ウトヴィア近衛兵長「魔導師長、姫様を見ていないか?いつもならそろそろ『王族たるもの剣技は身に着けて当然!さあ、丸太を一太刀にて両断する方法を教えてくださいませ!』なんて言ってくるはずなんだが…」
フォレスト・ウトヴィア魔導師長「…なるほど、最近妙に姫様の腕力が上がっていると思ったらそのせいだったのね。…それはともかく、姫様ならいないわよ。なんでも、森の迷宮に行ったらしいわ…」
近衛兵長「なに!?あの亡者どもが蔓延る危険な場所にか!?なぜそのような…!王と王妃はその件についてご存じなのか!?そうでないなら姫様が危ないと早くお伝えせねば…!」
魔導師長「待って。王と王妃にはもう私からお伝えしてあるわ…そのうえで、このままお一人にしておくということになっているの」
近衛兵長「馬鹿な!?霊の類が一切見えぬ姫様をあのような場所に置いておけばどんな悲惨なことになるか…!王はご自分の娘が可愛くないのか!?」
魔導師長「…あなたそれ、命が惜しくないから言ってるの?お二人がどれほどメリオーネ様を可愛がられているか知らないわけじゃないでしょう?今の発言、聞かれていたら耳にピアス開けて大樹から吊るされても文句は言えないわよ」
近衛兵長「う…す、すまん、失言だった。確かにそうだな…目に入れても、いやさ毛穴に入れても痛くないほど王は姫様を可愛がっておられる…しかし、だとすればなぜ放置を…?」
魔導師長「王位継承者だけが声を聴ける大精霊様がいらっしゃるでしょう?あの方が仰ったそうよ。姫様は心強い仲間と共にいるから大丈夫、姫様の成長のため今は見守るべき…と」
近衛兵長「む…姫様をたいへん可愛がってらっしゃる大精霊様たちのお言葉ならば…そうなのだろう。…不安は残るが…」
魔導師長「そうね。王や王妃も大精霊のお言葉だけに無視はできないけれど、不安過ぎて涙を流していたわ。大量に、それはもう滝のようにね」
近衛兵長「…突如出現した謎の滝の処理に侍女たちが追われていたのは、そういうわけか。しかし…大精霊様達は自分たちの姿が見えないのに、どうしてあんなに姫様を可愛がってるんだろうな?」
魔導師長「…見えないのに、国や民や精霊たちのために全力で頑張ってるんだもの。それは可愛がりたくもなるでしょう。実際…ウチの姫様ミスタルシア一可愛いし?」
近衛兵長「なるほど、同感だ。まったくもって同感だ。頷くことしかできない」
魔導師長「でしょう?…でも、だからこそ…」
近衛兵長「そうだな。だからこそ…」
二人『俺(私)たちも、心配ですよ、姫様…』
第8話 黄金の果実の間
1
無数の幽霊たちが蔓延る迷宮の中、長い長い道のりを進んできた騎士たち。そして、ついに…!
「お!なにやら広い場所に出たでありますな。これはもしや…!」
「きしさまきさしさま、見てください!広間の真ん中にある木!ぴっかぴかの果実があるですよ…!きっとあれが《黄金の果実》です!間違いないです!リベルテたち、ついにやったですね!」
「えへへ…ルーナさん、喜んでくれるですかね…?」
「きっと大丈夫であります!自分も、残った果実を回収すれば任務完了であります。騎士殿、皆様、ご協力誠にありがとうございました!」
リベルテとオルトロスの二人が果実をもいでいく。二人は達成感からか、嬉しそうに微笑みあっていた。だが、その一方で、メリオーネは…。
メリオーネ
「あれが《黄金の果実》…では、ここが迷宮の最奥…?」
「で、では…わたくしの霊的感応力は…結局…」
愕然とするメリオーネにリベルテが声をかけようとした、その時…突如、大きな振動が騎士たちを襲う!!
「ひゃあっ!?な、なんですかぁ!?」
幽霊たち
「キェェェェ…!!」
「大量の幽霊共が…!?くっ…騎士殿!一掃するでありますよ!!」
「有象無象めが…灰燼成り果てたい者から其処に並べ!」
2
騎士はオルトロスと協力し、あふれ出てきた幽霊たちを追い払った。しかし、迷宮内の異様な気配はいまだ消え去っていない!
「うぅぅ…ずっとイやな感じがするですよ…なんだか、尻尾のあたりがぞぞぞって…!いったいなにが起きているですか…?」
「これは、まさか…!騎士殿!自分たちが先程通ってきた道は、どうなっているでありますか!?」
オルトロスに言われ、振り返ってみると…ついさっきまであったはずの道が、なくなっている!
メリオーネ
「そんな…!他に道はございませんし…わたくしたち、ここに閉じ込められてしまいましたの!?」
「ぐぬぬ…不覚を取ったであります!自分は、この迷宮に幽霊が溢れている原因は《黄金の果実》であり、それさえ取り除けば幽霊共は大人しくここを去ると踏んでいましたが…」
「真実は、その逆でありました…!《黄金の果実》こそ、この迷宮に渦巻く最大の呪いの引き金!《果実》を奪い去ろうとする自分たちに対し、迷宮の全幽霊が牙を剥いたのでありましょう…!」
「そんな…な、なんとか出られないんですか!?」
「我が魔炎にて力づくで…!と言いたいところでありますが…現在は、この場所のみが非常な強大な呪力によって、異界に切り離されている状態であります」
「そのような状況に会って暴れようものなら…生身で異界に放り出されてしまうことも考えられます。最悪、そのまま消滅という末路も…」
「ひぃっ…!き、きしさまぁ…リベルテ、こわいですよ…!」
「ああっ、申し訳ありません!リベルテ殿!!真実をお伝えせねばと焦るばかりに…!うぅ、自分はなんという駄犬でありましょうか…!よく考えれば気づけたはずだというのに!」
メリオーネ
「と…ともあれ、出口を探しましょう!最早、霊を見える力が目覚めなかった程度で落ち込んでいる場合ではございませんわ…王族たるもの、このような所で息絶えるわけには参りません!」
こうして騎士たちは、迷宮の最奥から脱出する方法を探ることとなった…。
3
【月光の森の女王】
手元のティーカップの中にはもう、何も残っていないにもかかわらず、女王はじっとそれを見つめていた。
その清艶な瞳がふと我に返り、それから自分の足元へと流れていく。
「フィガロ?どうしたの?」
そこではすり寄った小さなふわふわの毛玉が、どこか心配そうに女王を見上げていた。
「…大丈夫。リベルテはもう、ただの小さな仔狼ではないのだから。…ふふ、それとも、ただ遊び相手がいなくて寂しいだけかしら?」
女王の手が小さな頭を撫で…止まる。
小さな頭を撫でる感触で、何かを思い出したかのようにその瞳が優しく細められた。
「…それとも…本当は、寂しがっているのは…」
美しき女王はどこか少女めいた仕草で肩をすくめ、微苦笑を浮かべる。
「いいえ、なんでもないわ、フィガロ。…あ、こら…なんでもないって言っているでしょう?こら、舐めないの…ふふっ、もう」
第9話 王族式脱出術?
1
《黄金の果実》を手にしたことで最大の呪いが発動し、迷宮どころか異界に閉じ込められてしまった騎士たち。
一致協力して脱出の方法を探し回るも、その成果は芳しくなかった…。
「参ったでありますなぁ…リベルテ殿と隅々まで嗅ぎ回ったでありますが、出口らしきものは見当たらないであります…」
「うぅ…リベルテ、そろそろお腹が空いてきちゃったですよ…。でもでも《黄金の果実》を食べるわけには…だって、これはルーナさんに…!」
メリオーネ
「皆様、申し訳ありません。わたくしが国の者たちと同じように、霊的存在と自在にコンタクトが取れれば、状況を打破する方法も見つかったかもしれませんのに…」
「いえ、そんな!メリオーネ殿が謝るようなことは、なにもないでありますよ」
メリオーネ
「けれど、わたくしが不甲斐ないばかりに、皆様へご負担を…まったく、ここまでくると自分の役立たずぶりが腹立たしいですわ!ムキー!」
「ムキーって…あの、メリオーネさん?ちょっと落ち着いた方がいいですよ…」
メリオーネ
「落ち着いていられませんわ!ムキキー!恩人たる皆様をここでお救いできずして!何が王族!何が王女!ムキキキー!!」
「わたくしなんて、霊が見えず声も聞こえず、必死に身につけた技術でそれを補うこともできず…」
「扱える力といったら、うっかりどなたから与えられた『運命を少々変える力』だけ!ああ、役立たず!こんなの『王』族でも『土』族でもなく、ただの『一』族ですわ!ムッキャー!」
「…んっ?え?…メリオーネさん…なんだか今、さらっとすごいこと言いませんでしたか?」
「…自分にも聞こえましたな。メリオーネ殿、ちょっと今の台詞、繰り返して頂けないでありますか?」
メリオーネ
「ですからっ!!こんなの『王』族でも『土』族でもなく、ただの『一』族だと申し上げたのです!ウキャー!!」
「あのー、メリオーネさん!?ちょっと落ち着いてほしいですよ1?なんか全然まともに話ができないです!」
「自責の念のあまり、何かのタカが外れてしまったのかもしれませんなぁ。責任感が強いというのも大変であります。…ともあれ騎士殿!まずはちょっとメリオーネ殿を落ち着かせるでありますよ!」
2
騎士たちは、ムキムキと怒るメリオーネを協力してなだめた。
メリオーネ
「はあはあ…た、大変申し訳ございませんわ、騎士様方…わたくし、お見苦しいところを…」
「大丈夫ですよ!それよりメリオーネさん、さっきの話の続きです。なんか、スゴイこと言ってたですよね?『運命を変える』とかなんとか…」
途中