ごった煮

創作用。まとめ

【個人用】ヴァーナレク

姦淫絶傑・ヴァーナレク

声優-柚木涼香

進化前 姦淫の絶傑・ヴァーナレク

愛絶の姦淫・ヴァーナレク

進化前

愛し合わないか。
パトスの海に滑らかな種を墜とせば、
染み付いた欲望はもう剥せない。
――嗚呼、世界に試練を与えるよ。

進化後 姦淫の絶傑・ヴァーナレク

進化前

交じり合うための衝動は、何物にも代え難い。
呼吸さえ忘れ、命の意味も忘却し、テーゼは消える。
果たしてその時、自己を取り戻せるものだろうか?
――嗚呼、世界に試練を与えるよ。

 

プレイ→愛はパトス、テーゼは消える

進化 →愛の最中に自己などいらない

攻撃 →抱擁の翼

効果 →優しく、激しく

退場 →世界は進むんだね

愛絶姦淫・ヴァーナレク

進化前 愛絶の姦淫・ヴァーナレク

進化前

憎しみ合おう。
原初の海にロゴスは芽生えて、
目覚めたエゴが他者とを分かつ。
――嗚呼、次なる試練を与えるよ。

進化後 愛絶の姦淫・ヴァーナレク

進化後

異端へと異質へと、憎しみは向かう。
姦淫、囁く。即ち、憎悪こそ境の徴。
区別し嫌悪し、己と他を裂き分けよ。
他者が無くば交じる悦びも無い故に。

 

本体
プレイ→目覚めたエゴが他者とを分かつ。
攻撃 →君は君。
進化 →交じる悦びには他者がいる。
退場 →試練は進むんだね…
特殊ボイス →覚めないように…交わろう。
プレイ→区別しよう、憎悪しよう。
攻撃 →違いを厭おう。
進化 →異なるものを人は憎む。
退場 →悦びを…!

愛絶飛翔

進化前 愛絶の飛翔

『愛絶』とは、姦淫である。
交わるために愛など不要。必要なのは憎悪のみ。
異なるものを厭うが人。自己と他者とは憎しみが分かつ。
誰かと交わる悦びは、他者がいなくば叶わない。

 

プレイ→交ざらぬように。

憎悪する愛絶

進化前 憎悪する愛絶

「私は私、君は君。この憎しみも、交じるがために」
――愛絶の姦淫・ヴァーナレク
「あれこれ理屈、好かねえこと。野暮ったくて困りんす」
――ブラッドロード・ユヅキ

仁義

進化前 紅の仁義

「塩次郎にもほどがありんす。身の丈を知りなんし」
――仁義の悪魔・ユヅキ
「恥じらうことはない。衝動ごと抱いて、交じり合おう」
――姦淫の絶傑・ヴァーナレク

 

【神バハ】姦淫の絶傑・ヴァーナレク フェイトエピソード

 

《邂逅》

…その地にはまさにこれから和平を結ぼうと歩み寄る二つの国があった。

隣国ゆえに長年領土を巡り争い、多くの犠牲を払った末にようやくの平穏を見出した彼らはーー。

ーー突如として天より舞い降りた七枚の翼と共に、滅びを迎えた。

…なぜ滅びたのか。どのように滅びたのか、詳細は知れない。その元凶を探るべく、近隣の別国に保護されたという唯一の生き残りの元を訪れる。

男性

「…よくは覚えていません」

「…争い、怨恨、怒り、哀しみ。…皆が忘れようとしていた。…忘れて、これからを歩もうと…」

「…あぁ…。あの『翼』だ…。…あの美しい七枚の翼が舞い降りた瞬間…皆は…」

「…殺し、合い…殺し……私は…妻も娘も…!」

「…あああああぁぁぁぁぁぁぁ…!」

兵士A

「…騎士殿っ?大丈夫ですか!」

兵士B

「くそ…またダメか…!誰か、拘束具を!騎士殿はこちらへーー!」

兵士A

「…申し訳ございません。あの男、当時のことを思い出そうとするとあのようになってしまい…」

兵士B

「…何かに憑かれたように、自分や周囲の物を傷つけます。そして狂ったように嘆くのです…」

「…私の『愛』は失われたと」

兵士A

「…仲間や家族を失った悲しみはわかります。しかし…あんな状態ではまともに話うを聞くことすらできない。我々も手を焼いており…」

兵士B

「…もはや、原因を知るには現地へ赴くより他はありません。どのような危険が待ち受けているかはわかりませんが…」

[選択肢]

兵士A

「は…向かわれるのですか!?今からお一人で!?」

「ああいえ《救世の騎士》殿ならば心配はないとは思うのですが。しかし、お気を付けください。よからぬ噂も聞きます」

「…二国の和平が結ばれる日。不可思議な翼が天を覆ったあの日天たまたま近くを通り掛かった行商が不穏なことを言っているのです」

「…なんでも。…和平の場であるはずの国の方角からは…黒煙が上がっていたと」

「謎の翼によるものなのか…それとも別の原因からなのか。…それはわかりません」

 

…黒煙。それに、生き残りの男が口にしていた「殺し合い」という言葉も気にかかる。

兵士たちの不安げな視線を受けつつも、騎士は真実解明のために和平の場でもあったという亡国へ足を向けたーー。

…生き物の気配はなかった。

…全てが死に絶え、無数の亡骸が横たわっている。

…亡骸はもつれ合い、重なるようにして、その手に握る剣で誰かを貫いている。これでは、まるで互いが互いを…。和平の場であったはずがなぜ…。

……っ?

不意に。鼻先を掠めるように、ヒラヒラと「何か」が足元へ落ちた。

…それは一枚の羽だった。不気味なほどに艶やかで、胎動するように明滅している。

天を覆った七枚の翼。何かに関係しているのかもしれない。

無意識に手を伸ばそうとした瞬間…腹の内から湧き出るような、得体の知れない感覚が全身を襲った…!

理性すら消し飛びそうになるほどの、全身の疼き。私はその得体の知れぬものに耐えながら、羽へと触れるーー。

???

「ーー嗚呼。ーー君は抗うんだね」

…突如としてあたりに風が巻き起こる。煽られる体を支えながら、辛うじて見据えたその先でーー。

ーー七枚の翼をはためかせ、妖艶な微笑を湛える美女が、こちらを見下ろしていた。

???

「…愛を感じる。…君の中から、溢れるほどの愛を」

「深く繋がりを持った者への愛。

 結束を誓った近しい物への愛

 自身を求めてくれる者への愛」

「その愛が、君を抱く限り。いずれは君も抗えなくなる。呪いのように君を縛る」

???

「苦しいだろう?愛おしいだろう?身を委ねていい。溺れていい。それこそが愛の証明なのだから」

七枚の翼は大きく羽ばたき、女性の体は光に包まれる。

ヴァーナレク

「ーー十禍絶傑が七、《ヴァーナレク》。愛を抱き、淫姦の試練を与える者」

「覚えていてほしい…愛おしい君よ。一度芽生えたモノには抗えない。世界は愛に溶け合う以外にない」

「…そして、全てが溶け合う時こそは。この『抱擁の翼』にて…君を抱こう」

耳を撫でるような甘い囁きと共に…ヴァーナレクと名乗った女は光の粒子となって掻き消えた。

 

闘争》

…深き森の奥に。…その獣人たちの集落は存在していた。

獣人A

「族長…本当によろしいのですか?人間が申し出た休戦協定に応じるなど」

族長の長

「…多くの血は流れた。我らの領土を侵せし人と、守らんがために戦う我ら。互いに争い…多くを失った」

獣人B

「しかし、納得がいきません!奴らは多くの木々を焼いた!我々の故郷を侵し、我々から家族を奪った!」

族長の長

「…我とて、同じことをした。皆の憎しみは十分に理解している。だがここは我慢しておくれ」

「これからを歩むために。我々と人間は全てを水に流し、赦し合わなければならぬーー」

「…………っ?」

「な……ッ?なんだ。アレは……!?」

???

「…血を分けた愛」

ヴァーナレク

「血に刻まれた『宿命』の繋がり。流れる血潮に穿たれた楔を絶ち、与えられた愛をーー」

「ーー裏切り、抗うことはできるか?」

獣人B

「…七枚の…翼…?」

獣人A

「あ、あああ…ああああああああああああ…!!!」

ーーーー。ーーーー。ーーーー。

…一方その頃。亡国を離れた騎士は急ぎ元いた隣国へ走っていた。

…現れた七枚の翼を持つ女。…彼女が残した言葉。悪い予感がする…。とても…。

…………!?

ーー前方。ーー進行方向に…黒煙が上がっていた。

獣人A

「オオオオオオォォォ…ッ!!!!」

兵士C

「が、ぁ……!!?」

兵士A

「……くッ!」

「何故だ…!貴殿ら森の民とは、休戦協定を結ぶことで合意したはず!それをなぜ…!」

獣人A

「ウウウウウゥゥゥゥ…!!!!」

「…赦せぬ…裏切れる、ものか…!」

獣人B

「愛する女は貴様らの兇刃に倒れた!愛する子は、苦しみながら貴様らの放った火にあぶり殺されたッ!!」

「貴様らにわかるか!?無情にも奪われたこの嘆きが!二度と取り戻せぬ…その不条理への憎しみが…ッ!!」

兵士A

「……っ。……だが……しかし……!」

族長の長

「…憎しみを捨てねば、前には進まぬ。ああ、その通りだ。頭ではわかっている。正しいことだとは理解している」

「だが…毎夜のように夢を見るのだ。肉が焼ける臭い、愛しい者たちの慟哭。悲鳴の残響はこの身を侵し、赦してはならぬと心が叫ぶ…!」

「家族を!何よりも自分を愛してくれた家族を忘れ、その絆を裏切り!愛を捨てて明日を生きることなど、できはしなかったのだ…ッ!!」

「我らの宿命!我らを縛る繋がり!逃れられぬ愛と、逃れられぬ憎しみが、我が身を焦がし続けるのであればッ!!」

兵士A

「………うぐ………ッ」

兵士B

「……ぁ……ぁ……」

「なんで…こんな…。みんな、死んで…」

「なぁ…目を開けてくれよ…。仕事上がりに、一緒に飲みに行くって約束してじゃないか…」

兵士A

「…。…。…。」

兵士B

「……ッ。あああ、あああああ…ッ!!!」

「……ッ!!?」

「…七枚の、翼…?」

???

「…志の下に結ばれた愛」

ヴァーナレク

「明日を共に生き、明日を共に創ると誓った『因縁』の繋がり。心に穿たれた楔を絶ち、与えられた愛を…」

「ーー裏切ることは、できるか?」

兵士B

「…………ッ!!!!」

「…ああ、そうだ。できはしない…できはしないさ…!」

「あああああああああああああッ!!!」

獣人A

「…………ッ?」

ーーーー!

兵士B

「……ッ?騎士、殿…!?」

「何故、邪魔を…!私はあの獣どもを…!!」

[選択肢]

兵士B

「止めないでください…奴らは、私の友を奪った…!かけがえのない友を…!!」

「友は…こいつは、笑って言ってたんだよ!無意味な争いなんて終わらせようって!苦しみはある、和解なんて簡単なことじゃない!それでも…!」

「こいつがいたから、無理なことでも頑張ってきた…頑張ってこれた…!それを、あいつらは…ッ!!」

「休戦など…和平など…もう知ったことか…!この報い、必ず受けさせる…!こいつの無念を晴らす…!!」

「どいてください………どけッ!!!!」

「ーーぐッ?」

…襲い掛かってくる兵士を峰打ちで大人しくさせる。しかしーー!

獣人B

「オオオオオォォォ…ッ!!!!」

兵士D

「アアアアアァァァ…ッ!!!!」

至るところで響き渡る怒号、交わる剣戟…このままでは…!

???

「…疼くかい?」

ーーーー!!?

背後から囁かれる声…騎士は警戒するように飛びのき、剣を構える…!

ヴァーナレク

「…溢れている。君の内から、瑞々しいほどの愛が」

「愛おしい…愛おしい、君よ。そのまま楽に、溶けるようにして。全てを曝け出そう。」

「そんな君の全てをーー抱きしめてあげるから」

……!

全身を灼けるような疼きが襲う…!自分自身を保っていられなくなる…!

…この得体の知れぬ力は…あの七枚の翼から波及しているようだ…!止めなくては、この場の全てが呑まれ、死に絶える…!

ヴァーナレク

「…嗚呼。君は尚も抗い、自己を持ち続けるんだね」

「なら、見せてほしい。溺れるほどの愛の海に浸り…人はどこまで人として在れるのかを」

人々に波及する憎しみの連鎖を止めるため、ヴァーナレクと対峙する騎士。しかし…!

ヴァーナレク

「ーー『抱擁の翼』」

ーーーー!

あらゆる斬撃がいなされる。無に還る。

そして、翼より巻き上がる微風に頬を撫でられるたびに…己の内にある『何か』が疼く。

憎しみにも似ている。敵意にも似ている…だが違う…これは…。

ヴァーナレク

「……愛だよ」

「君を縛るモノ。君を突き動かすモノ」

「彼らは苦しんでいた。愛を裏切り、繋がりを裏切ることを。その本能に逆らうことを」

「私はその苦しみの象徴たる枷を…少し外してあげただけ」

「愛を殺し、絆を裏切り。愛なき苦しみの最中に生きるのは…あまりにも切ない」

…本能が、叫ぶ。目の前の女を殺せと。今すぐに打つべきであると。

皆のために。親しい物のために。守りたい者たちのために。

殺意と呼ぶにはあまりにも尊い。自らの内に秘めるーー残酷で、切ない心の軋み。

ヴァーレナク

「…可哀想に。抗うから、苦しくなる」

「君の愛を。彼らの愛を。誰に否定できようか。誰が拒絶できようか」

「裏切れぬ『宿命』。絶てぬ『因縁』。繋がりを一度与えられてしまえば、自己の思考というものはどこまでも無意味」

「…ごらん、彼らを。失われた愛を裏切れぬ故に。呪縛から逃れられぬ故に。己の愛が、自己という定義を超える」

獣人A

「ーーーー!」

兵士D

「ーーーー!」

ヴァーレナク

「…君らが抱く情動こそが愛。人の根底を為す、美しくも醜い、曝け出された心の在り様」

…。…。…。

[選択肢]

ヴァーレナク

「…これはね。私が世界に与える試練なんだ」

「人はどうしても愛情に縛られる。愛を理由に、過ちを犯すことも厭わない。理性も、詭弁も、教理も。愛の前にはまるで意味を成さない」

「だからこそ…私は知りたい。この愛を抱いたまま、人は世界は。…正しく在れるのかどうかを」

「愛があるからこそ、人は争う。愛があるからこそ、人は他者の愛を侵す。侵し合う。ならば、私はーー。」

ーーーー!ーーーー!ーーーー!

…意識が…理性が…呑まれそうになる。

本能に身を任せれば楽だろう。心のまま剣を振れば楽だろう。

…だが…それは本当にーー。

ヴァーレナク

「…。…。…。」

「…君はーー」

???

「ーー何ともまぁ。ーーくだらない」

ーーーー!

獣人A

「ーーガ、ぁ…!!?」

兵士D

「ーーぐぅぅ…!!?」

…一瞬の間。のたうつ大蛇が如く畝る八つの刃が、大気を引き裂きながら争う人々の体へと絡みつく。

ヴァーレナク

「……っ」

「…やれやれ。愛を語らう最中に…無粋だね、オクトリス」

オクトリス

「その言葉、貴方へこそ送りましょう、愛滅卿」

「愛ある世界。貴方の手頭から与えられ、満ちる世界。そのようなモノに如何ほどの価値があるのでしょう」

「他者を拠り所にする者に先はない。満ちる世界に溺れる者が、高みへと至れる道理はない」

「ーー飢えなさい、哀れな子らよ。そして識りなさい。永劫なる渇き、際限ない簒奪こそが世界を進めることを」

人々

「ーーオオオオオオオ!!?」

「ーーアアアアアアア!!?」

蛇腹状の剣が再び大きく畝り、人々へ襲い掛かる。

…しかし、削ぎ落すのは肉ではない。刃に絡み取られ、嚙み千切られた者は、魂を喪失したようにその場へと頽れる。

オクトリス

「…これが『愛』。奪うには儚く、あまりに空疎」

ヴァーレナク

「……」

「それでもね。愛なくしては…人は生きられない。そういうものだよ、十禍絶傑が八、オクトリス」

オクトリス

「…貴方ほど。奪い甲斐のない者もそうはいないでしょう」

「卿が削がれました。此処には飢えはない。故に、我が懐を埋めるほどの意思もなし」

「…そこの騎士よ。いずれ我が簒奪の試練にて、相まみえましょう。貴方が内に秘める渇望。その意志ならば奪う価値もあるというもの」

…十禍絶傑が八、オクトリス。そう呼ばれた女は背を向けると、光の粒子となって消え失せた。

…後に残ったのは静寂。オクトリスによって奪われ、抜け殻のように虚空を見つめる者たちだけーー。

兵士D

「………ぁ………ぁ………」

「ーー……わた、しは……どうして……なん、の、なめに……」

ヴァーレナク

「……愛は失われた」

「彼らを縛るモノは消えた。その呪縛より解き放たれた。もう大丈夫、もう苦しむこともない。嗚呼、しかしーー」

「ーー愛なくして。人は何と虚しいのだろう」

兵士D

「ーーーー!?」

「ーーあぁぁ…あたた、かい……。ーーもっと、もっと……」

七枚の翼が、抜け殻のようになった男を包みーーそのまま吞み下すようにして吸収した。

ヴァーナレク

「…繋がりが愛を為す。繋がりなくして、愛は為せない」

「…教えてくれるかい、愛しい君よ。どうすれば人は…互いを侵すことなく、純粋な愛を為せるのだろうか」

…。…。…。

ヴァーナレク

「…ふふ。ごめんよ…意地悪な問いを投げてしまったね」

「オクトリスほどではないけれど。愛を語らうには…この場はあまりにも切ない」

「…君が私を求めてくれるのならば。いずれまたーー逢瀬にて」

七枚の翼が羽搏き、風が巻き起こる。

再び顔を上げた時には…ヴァーナレクの姿は消えていた。

 

《絶禍

…。…。…。

女の声

ーー赦せない。赦せるわけがない!

ーーあいつらは私からあの人を奪ったのよ!

男の声

ーーあいつと約束したんだ…!

ーー二人で立派な騎士になるんだって!

ーーそれを…それをお前たちが…ッ!

少女の声

ーーパパぁ…ママぁ…!

ーーどうして…どうして…!

???

「…。…。…。」

「嗚呼…」

「…何故、人は憎しみ合うのだろう。何故、人は争うのだろう。…何故、人は滅びるのだろう」

「…誰も抗えない。…その想いに、その呪縛に。…囚われてしまえば、もう」

「…それでも人は。…愛なくしては生きられない。…愛を求めずしては生きられない」

「…なんて不憫なのだろう。…なんて不憫で…愛おしいのだろう」

「…与え、与えられ。…その繋がりが、人を滅びに導くならば。…その軛を解き放てないというならば」

「…私が全てを与えよう。…抱きしめて、全てを吞み込もう」

「…きっと誰しもが。…純粋に愛を為せるようにーー。」

ヴァーナレク

「…。…。…。」

「…嗚呼。…来てくれたんだね。」

一定の距離まで歩を進め、騎士はヴァーナレクを見据えたまま立ち止まる。

ヴァーナレク

「刃を向けないのかい?ふふ、君は強いんだね」

「確固たる自己がある。思考する理性がある」

「…もし。もしも、世界に生きる人々が君のように在れるのであれば。或いはーー」

「…ごめんよ。つまらない話だった。せっかくの逢瀬…愛を深め合わなくてはね」

「ーーこの世界から。ーー争いが絶えることは決してない」

「それは憎しみ故か?…否。憎しみのみで人は人を呪えない。人が人を愛するが故に」

「…解るよ。君がこれまで如何ほどの命を救い、如何ほどの世界を救ってきたのか。その身に宿る愛の深さを見ればね」

「だからこそ、問おう。愛を重ね、愛を繋ぎ。その先にーー何があったのかを」

…ヴァーナレクが、ゆっくりと歩み寄ってくる。

全身が痺れたように動けない。この感覚はーー。

ヴァーナレク

「愛が人を繋ぐ。愛が怨嗟を繋ぐ。愛が滅びを繋ぐ」

「逃れられない。抗えない。全ては愛故に。全ては繋がり故に」

疼く、疼く、疼く。先日以上に。比べ物にならないくらいに本能が疼く。

「…ならば。愛に囚われた瞬間。人は滅ぶしかないのだろうか?」

「…いいや、違うよ。愛にはまだ、ぞの先がある。もっとも深く、甘く。原初にして濃密な愛が」

ーー彼女の、指がーー

ーー頬に、触れるーー。

ーーーああああーーあああああーー!!!!

ヴァーナレク

「…本能の愛」

「交わり、溶けあい。全てと繋がり合う『衝動』。肉体に穿たれた楔を絶ち、私が与えた愛をーー」

「ーー君は裏切ることができるだろうか?」

ーー衝動。衝動、衝動、衝動、衝動

ーー理性が、飛ぶ。ーーソレ、から、逃げられナイーー。

ヴァーナレク

「…愛はパトス。…テーゼは消える」

「愛は自己を凌駕する。理性も、教理をも超えて。全てはその衝動の前に無力」

「ならば…愛の境界を取り払おう。人々に無意味な自己を捨てさせて、『抱擁の翼』で私の中に取り込もう」

「自己が消えれば、人は争うことはなくなる。私の中で一つに交われば、苦しみも消える。ただひたすらに、純粋な愛を為せる」

「怖がらなくていい。私が与え、私が抱こう。君たちはただ快感に身を委ね。愛という無限に溺れればいいだけ」

「…これまでに試練を与えた数多の世界。誰しもが、抗えなかった。純粋な愛で世界を満たすには、もうこれしか方法はないからーー」

…頬に触れる指先。優しく身を包む、七枚の翼。小さく囁かれたその言葉にーー。

???

「…嗚呼」

「…どうして、人は。…どうして、愛はーー」

「…どうして。…私はーー」

ーーどうしようもない、寂しさを感じた。

ヴァーナレク

「ーーーーっ」

「……何故。君は、そうまでしてーー」

…。…。…。

[選択肢]

ヴァーナレク

「……」

「…同じだよ。いくら抗おうとも。いずれは君も、皆と同じ破滅を辿る」

「…混じり合い、溶け合い。一つに還れば、きっと心地よい。だからーー」

「愛しい君よーーどうか、これ以上。私の心を乱さないでくれ。私に切ない希望を…抱かせないでくれ」

舞い散る羽を残し…その場からヴァーナレクの姿は消えた。

…………。…………。…………。

 

【神バハ】不殺の絶傑・エズエィア 《闘争》より抜粋

 

エズディア

「今日はここで終いとしよう。——客人も来た事だしな」

エズディアがそう口にしたと同時、天覆う枝葉を掻い潜り、ひとひらの羽が舞い落ちてきた。

羽は大地に触れると、融けるように解け……次の瞬間、騎士の眼前に翼を生やした女が静かに滞空していた。

エズディア

「淫姦の《ヴァーレナク》か。愛滅卿が来たとなれば、やはり今日はここまでだな」

ヴァーレナク

「……おや。不殺の君。成程、私は邪魔をしたようだ」

「そして……君は……」

女の瞳が騎士を映す。女の翼が宙を掻く。女が騎士に手を伸ばす。女の翼も騎士へ伸びていく――。

ヴァーレナク

「嗚呼、君。————愛し合うかい?」

戦慄と『衝動』。

突如心中に『植えられた』それを振り切り騎士は後ずさって剣を構えた。『本能』が叫ぶ。……この女は危険だ。

その思考と警戒の間隙を縫い――――

エズディア

「——呵々《かか》!」

三本目の《矢》が、騎士に突き立った。

エズディア

「まだ青い。腐り熟れるまで遠いなァ。……先刻言った『ここらで終い』?気を悪くするな、あれは冗談だ」

ヴァーレナク

「不殺の君。……うん、君というのは、実に君だね」

エズディア

「無論、私は永劫、この私だとも。あとは好きに抱けばいいさ、愛滅卿。ただ……」

「その果実、手ごわいぞ?」

女にそう告げ笑ったエズディアは、身体を光へと変化させ、樹々を突き抜け天へと去った。

ヴァーレナク

「……君は救世の騎士、だろうか?濡れ合う前に卿が削がれてしまったね」

「次こそは、混じり気なしに混ざり合おう。吐息を吐き合い、吸い合おう。……楽しみにしているよ」

やがて女……ヴァーナレクの身体もまた光へと形を変え、青空へ飛び去っていく。森には、騎士だけが残された――。