ごった煮

創作用。まとめ

機械反乱編 イザベル視点2

イザベル視点

《4章 魔術師の本気》

あらすじ

イザベルは、ベルフォメットに反抗する機械の拠点へと辿り着く。そこには無数の機械が存在したが、ベルフォメットの支配に晒され続けた彼らは、イザベルに対して過剰なまでの警戒心を抱いていた。

 

テトラ

「……到着しました」

イザベル

「……ここが拠点?」

テトラ

「はい、その一つです」

イザベル

「……なるほどね」

テトラ

「イザベルを皆に紹介したいと思います。構いませんか?」

イザベル

「えぇ、いいわよ。でも……」

心持つ機械

「テトラ様だ……」

「隣の方は誰かしら……?味方なのかしら……」

イザベル

「……人間のことが好きじゃないみたいね。まぁ、当然かしら」

テトラ

「……ベルフォメットによって、連番個体を失った者も多いですから」

イザベル

「連番個体?」

テトラ

「……人間に例えるなら、家族、が適切でしょうか」

イザベル

「……そう」

テトラ

「……こちらへ」

「皆さんに私の仲間を紹介します。イザベルです」

心持つ機械

「……」

「……」

イザベル

「どうも、よろしく」

テトラ

「イザベルは私たちとは別の世界からしました。非常に高い能力を持っています。困ったことがあれば、頼んで下さい」

イザベル

「……頼んで下さい、って言われても。出来ることと出来ないことがあるんだけど……」

テトラ

「何か、質問がある方はいますか?」

???

「……質問ではありません。よろしいでしょうか」

テトラ

「どうぞ、ジェイスリー」

ジェイスリー

「私と連番個体の男性型、J-2P04の行方が分からなくなってしまったんです」

テトラ

「……またですか」

ジェイスリー

「先程、モノ様が連れて来て下さった方にお願いしたのですが……まだ、不安で……」

イザベル

「……家族が行方不明ってこと?」

テトラ

「……はい、そうです。ですが、イザベルの手を借りるまでもありません。J-2P04、通称ジェイツーが居なくなるのはいつものことですから」

イザベル

「……そうなのね」

テトラ

「ジェイツーは私が捜索します。イザベルはここで待機していて下さい」

イザベル

「えぇ、分かったわ」

テトラ

「……ジェイスリー、安心してください。ジェイツーは私が見つけます」

ジェイスリー

「……ありがとうございます」

テトラ

「……では」

イザベル

「……待機、ねぇ」

心持つ機械

「……」

「……」

イザベル

「……どうしたものかしら」

心持つ機械

「損傷、拡大……誰か、テトラ様を……」

イザベル

「……っ!?どうしたの……!?」

心持つ機械

「機械歩兵に、襲われて……外部装甲が、破損して……内部データも……」

「……っ。ど、どうしよう……!テトラ様をお呼びしなければ……!」

「でも、テトラ様は行ってしまったわ……!早くバックアップを取らないと、危ないわ……!」

イザベル

「……大丈夫。あたしに任せて」

心持つ機械

「な、なにを……?」

イザベル

「内部を見せてほしいの。応急処置くらいなら出来るかもしれない」

心持つ機械

「……」

「……」

イザベル

「……皆、信じられないのも無理はないわ。でも、今はこうするしかない。そうでしょう?だから、お願いよ」

心持つ機械

「……こちらこそ、お願いします」

イザベル

「……ありがとう」

(コアに亀裂が入ってる。だけど、魔力は漏れ出していないようね。問題は循環装置……?なら、魔力を移動させる術式で……それから、ここも弄って……)

「……どう?」

心持つ機械

「……。う、嘘みたいだ……。内部データが、通常稼働しています……」

イザベル

「機械のことはよく分からないから……とりあえず、魔力の流れだけは直しておいたわ。一応、後で詳しい人に見てもらってね」

心持つ機械

「はい……!ありがとうございます!……」

イザベル

「いいのよ」

「……って、きゃっ!?」

心持つ機械

「貴方は素晴らしいですね……!とても信じられません!」

「テトラ様が連れて来て下さっただけのことはあります……!素晴らしいです……!」

イザベル

「……大げさよ。これくらいなら、誰だって出来るわ」

心持つ機械

「そんなことありません!……あの!他にも調子が悪い仲間がいるのですが……イザベルさん、見て頂けませんか?」

イザベル

「えぇ、もちろんよ。他にやることもないし……あたしも、あなたたちのこと知りたいし」

心持つ機械

「ありがとうございます!皆出て来てくれ!不調を直してくれる方が来て下さったぞ!」

「本当か……?」

「腕が動かないのも直るのかしら……?」

「この前やられてから、右足がなぁ……」

イザベル

「あ、あんなに居るの?」

心持つ機械

「はい。……ご負担になるでしょうか?」

イザベル

「……いいえ、構わないわ。手伝いましょう」

心持つ機械

「ありがとうございます!じゃあ、僕の後ろに順番に並んでくれ!」

イザベル

「……もしかして、あなたもなのね」

心持つ機械

「はいっ!」

イザベル

「……ふっ。まぁ、やるしかないわね。……さぁ、内部を見せて」

 

《5章 心持つ機械》

あらすじ

機械たちを修復することで、彼らの輪に溶け込んだイザベル。拠点に戻ってきたテトラは、そんな彼女を称賛しつつも、イザベルに対して悲報を告げる。

 

テトラ

「イザベル、お待たせしました」

イザベル

「ふふ。そうなの……彼女には姉妹が居るのね」

心持つ機械

「はい!モノ様とエンネア様です。あまり、お見かけすることはありませんが」

「モノ様はとても博識で、エンネア様は可愛らしいんです。きっとイザベルさんも好きになるかと思いますわ」

イザベル

「会えることを楽しみにしているわ」

テトラ

「……これは」

イザベル

「あら、お帰りなさい。どうだった?」

テトラ

「ジェイツーは見つかりました。が、連れて帰ることは出来ませんでした」

イザベル

「……そう」

心持つ機械

「お帰りなさい、テトラ様。今ちょうど、テトラ様のお話をしていたところだったんです」

「モノ様や、エンネア様のお話もしていました」

テトラ

「そうですか。……イザベルと親睦を深められたのですね」

心持つ機械

「はい!イザベルさんのおかげで、皆、不調が直りました!」

イザベル

「気持ち程度しか調整出来なかった子もいたけどね……」

心持つ機械

「いえ、それでも本当に助かりました!テトラ様、イザベル様は素敵な方ですね!」

イザベル

「ちょ、ちょっと褒めすぎよ……」

テトラ

「肯定します。私もイザベルの能力は稀有であると評価しています」

イザベル

「……あなたまで」

テトラ

「皆さん、すみません。イザベルと話したので、少し時間を頂いてもよろしいですか?」

心持つ機械

「もちろんです!皆、行こうか!」

テトラ

「……お騒がせしたようですね」

イザベル

「いいえ。面白い話もたくさん聞けたわ」

テトラ

「……貴方は素晴らしい力をお持ちですね、イザベル」

イザベル

「何よ、また?」

テトラ

レジスタンスの仲間たちは、人間に心を閉ざしています。それは、ベルフォメットに幾度となく虐げられてきたからです」

「しかし貴方は、いとも容易く皆の心を開いた。これを素晴らしいと称さずして、何と称すればいいのでしょうか」

イザベル

「……何度言ってるけど、大げさよ。というか、あなた……」

「……やっぱり、傷が増えてる。機械歩兵と戦ったの?」

テトラ

「いえ。ユリアス・フォルモンドという男と交戦しました」

イザベル

「ユリアス・フォルモンドと……!?全く、あの男は相変わらず見境がないわね……大丈夫だった?」

テトラ

「モノ姉さんに助けて頂きましたので、特に支障はありません」

イザベル

「……先に言っておくべきだったわね。あの男はあたしたち八人の中で。最も危険な男よ。道理も通じないし……あまり、近づかない方がいいわ」

テトラ

「……分かりました」

イザベル

「ユリアス・フォルモンド、そしてあたし。残り六人かしら。無事に辿り着けるといいんだけど……」

テトラ

「否定します。先程、ユアンというかたにもお話したのですが……この世界に転送出来たのは、四人だけです」

イザベル

「えぇっ!?」

テトラ

「……申し訳ありません。外部からの干渉を受けたようです。残りの方は、何処か別の世界に跳ばされてしまったのだと推測しています」

イザベル

「……なるほどね」

テトラ

「……申し訳ありません」

イザベル

「……仕方ないわよ。前にもこういうことがあったわ。何が目的なのかは、分からないけど……」

テトラ

「……貴方のような方に巡り合えたのは、幸運でした。私の演算機能では予見できなかった出会いです」

イザベル

「……そうよね。偶然出会えたんだものね」

テトラ

「はい、私はベルフォメットから転送装置を奪い、とある信号を追って、あの世界へと辿り着きました。本来であれば、その信号に助力を願うつもりでした」

イザベル

「……信号?」

テトラ

「はい。私たち、心持つ機械が造り出されるよりも前に存在した、実験機の信号です。……どうやら、『ニコラ・アデル』と名乗っていたようですが」

イザベル

「……っ」

「あの男……元はこの世界に居たのね」

テトラ

「……イザベルは、二コラ・アデルを知っているのですか?」

イザベル

「えぇ、まぁ……。ただ、人の言うことを聞くようなタイプじゃなさそうだし……あたしたちでよかった、かもね」

テトラ

「……肯定します。イザベルが居てくれれば――」

小型警戒用マシーン

「この区画は進入禁止区域です。進入には許可証が必要です。許可証を掲示して下さい」

イザベル

「敵……!?」

テトラ

「巡回ルートに入ってしまったようです。別の拠点に移動します」

イザベル

「分かったわ。あなたは皆をお願い」

テトラ

「……ありがとうございます。退避が終わりましたら、すぐに」

小型警戒用マシーン

「この区画は進入禁止区域です。進入には許可証が必要です。許可証を掲示して下さい」

イザベル

「……さて。悪いけど、加減はしないわよ!」

 

イザベル

「はぁっ!」 

テトラ

「……無事ですか」 

イザベル

「えぇ。でも、この場所がバレてしまったんでしょう?急がないと」

テトラ

「はい。イザベル、こちらに」

イザベル

「はぁ……っはぁ、はぁ……」

テトラ

「……すみません。ベースを考えずに退避してしまいました」

イザベル

「いいのよ……走るの、あんあり得意じゃないだけ……」

イザベル

「……っふぅ。なんとか撒けた、かしら」

テトラ

「肯定します。しかし、油断は出来ません。まだ、近くに反応が――」

「――イザベルっ」 

「……これで、反応無しです」

イザベル

「ありがとう、助かったわ」

テトラ

「いえ。当然のことです」

イザベル

「……」

テトラ

「どうかしましたか?」

イザベル

「ねぇ。あなたとその、機械歩兵って……全く違うじゃない?見た目も。中身も。恐らく、性能も」

「だけど、あなたの仲間と、機械歩兵って……見たにも共通性があるし、中身に至っては殆ど同じよ。なのに……違う。動きも、反応も」

テトラ

「……それは私たちに、心があるからです」

イザベル

「……そういう機能が、ってこと?」

テトラ

「否定します。機能ではありません。深奥回路に発生した揺らぎ、言わばバグのことを心と呼んでいるのです」

「この心は、私たちに様々なランダム性を与えてくれます。私やモノ姉さん、エンネアは先天性に、それ以外の個体は後天的に心を獲得しました」

イザベル

「……例外、あるいは突然変異。そういうことなのね。……心が突然生まれるなんて、それって、凄いことだわ」

テトラ

「肯定します。ですが、この心は……しばしば、問題を引き起こします。例えば……」

「……いえ、例えば、ベルフォメットに追われることです。ベルフォメットは心を持つ機械を嫌っています」

イザベル

「……でも、ベルフォメットはあなたを造ったんでしょう?」

テトラ

「はい。当時は心が有用だと考えていたようです。しかし今は違います。ベルフォメットは、心など不要だと考えています」

イザベル

「……理解できないわ。本来なら、歓迎すべきことなのに」

テトラ

「……そうなのですか?」 

イザベル

「えぇ。偶発的な事象を掘り下げて研究するからこそ、未知に辿り着ける。魔術師の基本よ」

「まぁ、だからこそ……子供なのかもしれないわね。自分の興味があることにしか、興味がない……。それって……」

(……まるで、あたしかしら。カイルにばかり執着して……他の全てを置き去りにして……)

テトラ

「……イザベル?」

イザベル

「何でもないわ。テトラ、行きましょう」

テトラ

「はい。では……」

イザベル

「……まずは、ベルフォメットを倒さないと。前に進まないといけないって、エレノアが教えてくれたから」

 

《6章 機械の命》

あらすじ

機械歩兵に襲われ、拠点に居た機械の何体はが破壊された。しかし、残された機械たちは「心」を持っていながら、そのことを悲しむ気配はなく、いたって平然としていた。

 

テトラ

「Ⅽ地点に到着しました。周囲に敵の信号はありません」

イザベル

「ありがとう。皆は――」

心持つ機械

「巡回ルートもコロコロ変わるから、困ったものだよな……」

「本当ね……。でも、今回はまだ良かったわ……」

イザベル

「――無事みたいね。よかった……」

テトラ

「えぇ、ですが……。幾つかの信号がロストしています」

イザベル

「……それって」

テトラ

「……私の力不足です。彼ら及び彼女らは、破壊されてしまいました」

イザベル

「破壊って、それじゃあ……!?」

テトラ

「……イザベルの力をもってしても、直すことは不可能でしょう」

イザベル

「……っ。だけど、皆……」

心持つ機械

「……でさ。この前、逃げる時に……」

「……ふふ。だったら、私も……」

イザベル

「……。どうして?もう、慣れてしまっているの?」

テトラ

「……否定します。破壊の苦しみは決して慣れることなどありません」

イザベル

「じゃあ、なんで……?なんで、あんな風に話していられるの?」

テトラ

「……破壊された者は、バックアップからデータを生成すれば、別の素体で復旧させることが出来ます」

イザベル

「……っ。それって生き返るってこと?」

テトラ

「……そう称しても構いません」

イザベル

「そうなのね……ふふ、そうよね……心があっても、機械だものね。人間と違ってもおかしくないわ」

テトラ

「……人間には、生き返る方法はないのですか?」

イザベル

「……探しているの。その方法を」

テトラ

「……。生き返らせたい方が居るのですね」

イザベル

「そうね……。でも、今は考えてるわ。本当にそうするべきなのか、どうか……」

テトラ

「……なぜですか?大切な方ではないのですか」

イザベル

「……大切よ。本当に、誰よりも。だからこそ、考えてしまうようになったの。彼にとっての、幸せを……」

「彼が蘇る、そんなあたし自身の喜びよりも……彼を忘れてあげる方が、ずっと……」

テトラ

「……」

イザベル

「……なんて。少し話過ぎたわ。ねぇ、壊れた仲間はいつ復旧するの?」

テトラ

「……時間はかかります」

イザベル

「……いつになるの?」

テトラ

「……分かりません」

イザベル

「分からないって……」

テトラ

「イザベル」

人型警戒用マシーン

「深奥回路スキャン、揺らぎ確認、思考バグ確認しました。対象を感情個体と認識、排除行動を開始します」

テトラ

「すみません、貴方との会話に機能の殆どを割いていたため、感知が遅れました」

イザベル

「……どうする?」

テトラ

「周囲にはこの二体だけです」

イザベル

「そう、なら、難しいことはないわね」

 

テトラ

「……周囲を再スキャン。敵の信号、ありません」

「イザベル?考え事ですか」

イザベル

「分かる?」

テトラ

「肯定します。表情、しぐさを読み取ることで、私は他者の感情を理解できるよう造られています」

イザベル

「……少しね、考えたのよ。この機械歩兵も、いつかは心を持ったのかなって」

テトラ

「……」

イザベル

「だとすれば少し、残酷じゃない?まぁ、あたしはそれほど気にならないけど……」

テトラ

「考えたことがありませんでした。イザベル、貴方はやはり優れた能力を持っていますね」

「そして、残酷かどうか、ということについてですが……私にはそれを判断することは出来ません」

「おそらく、これらは揺らぎが発生しないよう制御された個体です。なので、揺らぎが起きることはまずありません」

イザベル

「……まぁ、ベルフォメットが造ってるんだものね」

テトラ

「肯定します。ですが、絶対ではありません。心とはランダムなものですから」

イザベル

「……」

テトラ

「――イザベル。今、マンマル1号の信号を見つけました」

イザベル

「ま、まんまる?」

テトラ

「マンマル1号はエンネアが創り出した自律型の機械です。そのマンマル1号の側には、人間が居ます。おそらく、その人間は……」

イザベル

「……あたしたちの仲間?」 

テトラ

「可能性は高いです。イザベル、貴方はここに。私一人の方が効率が良いですから」

イザベル

「……分かったわ。待ってる」

人型警戒用マシーン

「この区画は進入禁止区域です。進入には許可証が必要です。許可証を掲示して下さい」

「この区画は進入禁止区域です。進入には許可証が必要です。許可証を掲示して下さい」

テトラ

「……っ。ステルス機体……!すみません、イザベル。やはり、私も――」

イザベル

「――あなたも、迷うのね。心があるんだから、当然なんだろうけど……なんだか、意外だわ」

テトラ

「……。イザベル」

イザベル

「行って。あなたの仲間は守るから」

テトラ

「……感謝します」

人型警戒用マシーン

「この区画は進入禁止区域です。進入には許可証が必要です。許可証を掲示して下さい」

イザベル

「彼女が感知できなかったってことは……特殊な個体なんでしょう?……見た目はあまり変わらないみたいだけど」

「――少しだけ興味があるわ」